一期一会 (ページ38)

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もうすぐ映画の宣伝収録が始まるのに、壱馬さんは

いったいどこに行ったんだ？

北人さんの世話を焼いていて、壱馬さんにノータッチだった。

私はキョロキョロしながら楽屋を出て早歩きで壱馬

さんを探した。

角を曲がろうとしたら話し声が聞こえて立ち止まる。

女「川村くんすごいカッコいいですよね～。今度ご

飯行ってくださいよ～。」

壱「ありがとうございます。機会があればぜひ。」

この声は壱馬さんと、今日の番組にいつも出てる綺

麗なタレントの方だ…。

2人はその後も話を続けたので、私は来た道を早足で

戻った。

やっぱり壱馬さんにふさわしいのは、あの方みたい

に綺麗だったり可愛いかったり、スタイルが良かっ

たり…そう、私とはいる世界が違うんだ。

それに、前に2人でご飯に行くのを誘ってくれたのも

社交辞令決定だ。

少し…ほんの少し、いつか2人でご飯に行けるって期

待していた自分が恥ずかしい。

スタスタと歩く私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。

そしてあと少しで楽屋ってところで、北人さんに腕を掴まれた。

私が振り向かずにいたら、

北「言いたくなったらいつでも言ってください。俺

はずっとここにいるから。」

どっかで聞いたことのあるセリフ？と思い振り返ると、

北「前にAさんが俺に言ってくれた言葉です。

でも俺だったらそんな顔はさせない。」

そう言われた瞬間、目が熱くなるのが分かった。

でもごまかすように、私は笑った。

「ふふ。そういえば、そんなこと言いましたね。

…北人さんの大切になれた人は幸せ者です。その

心、絶対忘れちゃダメですよ！さぁ行きましょう！！」

私は歩き出した。

もうやめよう。

好きって気づけた瞬間に終わる恋を。

北「はぁ…。なんでこうも伝わらないんだろ。

こんなの初めて。」