一期一会 (ページ18)

今日:38 hit、昨日:10 hit、合計:163,296 hit

１８ページ18

とにかく、陸さんに謝罪と帽子を返すことができて良かった。

メンバーとの企画の打ち合わせの後は歌番組収録のリハーサル。

だけどあれからちょっと機嫌が悪く見えた壱馬さ

ん、調子が悪いのか壱馬さんのパートのやり直しが

続いていた。

陸「すいません、少し休憩もらってもいいです

か？…壱馬行っておいで。」

陸さんはこの事態にすぐ気付き、ディレクターさん

に頭を下げた。

壱馬さんもすいません、と小さな声で一礼してス

タジオを後にした。

私は壱馬さんが心配で、スタジオを飛び出した。

スタジオを出てしばらく行ったところの、ちょっし

たスペースで、うずくまる壱馬さんを発見して私は

駆け寄った。

「はい、これ食べてください。」

壱馬さんはゆっくり顔を少しだけ上げて、私の手か

ら１つの飴を受け取った。

「もっと女の子らしい飴じゃないんすか。いちごみるくとか。」

私があげた飴は、レトロな袋につつまれたのど飴。

「すいません渋くて…。でもこれ私のおじいちゃん

が喉に良いんだぞって昔からよく舐めてたやつなん

で間違いないです！」

壱「おばあちゃんみたいなこと言うんすね。笑」

「なっ！壱馬さんヒドイです！…でも少し気分変わ

りました？」

壱「ありがとうございます。Aさんで充電できま

した。」

壱馬さんは、いつも時折見せてくれる優しい笑顔を

見せて立ち上がった。

「壱馬さん！1人で抱え込まないで、いつでも頼って

ください！」

私は先に歩き出した壱馬さんの背中に呼びかけた。

すると壱馬さんは、

頼りにしてますよマネの右腕さん、と振り向きなが

ら舌をベッと出してスタジオへ戻った。