nostalgic ２

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壱「なんていうかその…、

あの方がお互いのためかと思って…。」




「お互いのため…？」





黙っていなくなって、ずっと忘れさせなくすることの

どこがお互いのためなの…？






壱「だから…、」

「黙っていなくなっちゃって、何年も忘れられなくて

っ…、でももう諦めようとしてたのにっ…どうして…

どうして優しくするんですか？！」






私の視界がいっきに滲むのと同時に、お互いのためと

はいえ、突き放された今までの気持ちが一気に溢れ出

てしまう。







壱「…諦めんなよ…。」


「えっ…？」





抱きしめられている彼の腕に、少し力が入る。







壱「あの時…Aはまだ未成年で、俺も大事な時期

で踏み込めなかったんや。だけど…俺がちゃんと一人

前になってAを守れるようになったら、もう一度

会いに行こうって決めてた。その時にはAももう

絶対成人してるし。」







後先のことまで考えて、あえて私と離れたってこ

と…？






壱「ま、でも北人のお節介のおかげでAから会い

に来てくれたけど。」







苦笑いの壱馬くんに対して私は少しブスッとした声

で、




「…もし…私がもう彼氏とか、結婚してたらどうする

んですか…。」








すると、くるりと向きを変えられて対面にさせられ

る。






壱「そのために忘れないまじない、かけたんや。でも

Aは絶対、俺のこと忘れはしないって自信あった

けどな。」






そう自信満々な声で、ふっと笑うのが少し悔しいの

と、恥ずかしさから顔が見れなくて俯きながら、なに

それ…と私は呟いた。






壱馬くんが何も言わないでいなくなってしまったこと

は、未成年の私の立場を守るのと、自分の立場をわき

まえたが故の行動だったということを知り、答え合わ

せができていく。







そして、北人くんが私に口酸っぱく言っていた言葉が

頭をよぎった。





北ーなんで？って疑問に思うようなことがあってもそ

れは、壱馬なりの優しさだって思ってほしいー









いきなり姿を消してしまって、なんで？と思った。



突き放された気がして、どうして？と思った。






でも全部本当は、壱馬くんが私とのことを考えてくれ

ての行動だったんだ…。






あの時は理解ができなかった「もう少し大人になった

ら分かるよ」って北人くんの言葉の意味が今、やっと

分かった。

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