nostalgic

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北「だからそれはっ…、」




北人くんはその後を言いにくそうにして、モゴモゴし

ている。





ほらね、やっぱりそうなんだ。





そうやって口ごもるということは、都合が悪いってこ

と。





もうこれ以上、傷つきたくない。



辛い思いをしたくない。







「失礼します…。」





私は一礼してその場を去ろうと歩き出した時、懲りず

に北人くんが名前を呼ぶので、反射的にその場で

ピタリと立ち止まる。






北「Aちゃんは、友達の頼みは聞いてくれる子だ

って信じてるから！」






友達…。



私と北人くんが友達…？





「…私たちが友達なら…もうこれ以上辛い思いをさせ

ないでください。」





失礼します、と小さく呟いて私は家に走り出した。









家に帰った私は、自室のベッドにしばらく寝そべっ

ていた。





泣き顔を見られたくなかったので、お母さんには体調

が悪いから先に上がらせてほしいと連絡をしたら、快

く了承してくれた。








ローテーブルや、床に置いてある活性化事業に関して

の書類を見つめ、思う。






そういえばあの時、私がどの道を選ぼうと応援してほ

しいって、彼は両親に頭下げてくれたんだっけ…。






それに何も無かった私に、彼のおかげで明確な目標が

できた。





あの時ブログに紹介してくれた反響は大きくて、お客

さんは増えたけど、あれがきっかけでもっと沢山の人

にうちのパンを食べてもらいたいとも思った。







でもそうするには、ここまで来てもらう必要がある。



また、ここに来たいと思わせなくちゃいけない。





それは、廃れた商店街の活気を取り戻すことに繋がっ

たんだ。






あれだけここが嫌いだったのに、あれだけここを出た

いと言っていたのに…、







ここに留まって、やるべきことができた。









その道筋のきっかけを作ってくれたのは、間違いなく

彼。




そんな彼が、好きだった。





だけど好きだと気づいた瞬間、彼は煙の如く姿を消し

てしまって…。






忘れたいのに忘れられなくて、忘れなきゃいけないの

に、忘れられなくて…もう何年も一人、ピリオドを打

てずにきた。





そんな未練たらたらな女がライブに行ったところで、

もし私の存在に彼が気づいたら、絶対迷惑に思われる

に違いない。




いや…むしろ、覚えてもくれていない現実を突きつけ

られる方が辛い。

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