nostalgic

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「あの…ところで、どこへ…？」




とりあえずお店を出たのはいいものの、特に行き先を

決めずに歩いている気がして恐る恐る聞いてみる。





北「ちょっと、行きたいところあるんだよね。」



「行きたい…ところ…？」







そして、こっちか？と呟きながら携帯で地図らしきも

のを見て歩く北人くんの後をついていくと…、









「…って、なんでここ？！」





着いた場所はもう何年も立ち寄っていない、あの場所

だった。






北「はぁ〜！やっぱりここは空気が良いなぁ〜。」





両手を軽く広げて、息を吸う北人くん。






私も久しぶりに来たからか、辺りを見回すとあの時に

は無かった春の花々がチラホラあちこちで咲いてい

る。






北「懐かしいなぁ。あの時は〜…まだAちゃんは

高校生だったもんね？」






広げた手をぱたんと閉じて、少し後ろにいる私に顔だ

け振り返る。





「そうですね…。」






ほんと懐かしい。





だけど、切ない思い出であんまり良い懐かしさじゃな

い。




何年もここを素通りしてきたのに、今この瞬間でいっ

きに気持ちが巻き戻される。








北「一方的に電話切って、その後の電話も出ないそん

な誰かさんは、ずいぶんと大人の女性になっちゃっ

て。」





「そっ、それはっ…、」







うちのお店に急にすごい数のお客さんが来た時、まだ

彼がブログで紹介してくれたと知らなくて、私は真っ

先に北人くんに電話をした。





その時に知った、彼の優しさや存在が辛くなって、彼

と関わる人や物を、全て私の中から無くさなければと

思い、北人くんとの通話を強制的に終わらせたんだ。






だけどその後、日をあけて何度か北人くんは電話をし

てきてくれたけど、私はそれに出ることはなく今日ま

できた。





電話にでてしまえば、また彼に繋がる道ができてしま

い、欲張ってしまいそうだったから…。







「電話の件は…すいませんでした…。」





北「いいよ。そのかわり〜…はい、これ。」




すると北人くんはお財布から一枚の紙を取り出して、

私の顔の前にそれを差し出した。





北「東京観光がてら来てよ、俺たちのライブ。」



「えっ…、」




反射的にその紙を受け取ろうとした手を、思わず引っ

込める。







「…遠慮しておきます…。」



北「Aちゃんに拒否権はありません。」



「なっ？！」



慌てて顔を上げると、北人くんの悪戯な顔と目が合

う。

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