nostalgic

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もう…お母さんったら

ほんと強引。





私は本日二度目のため息をつきながら、足取り重くお

父さんのいる仕事場に向かった。







カランカラン




古びた木製のドアを開けると、焼きたてのパンの香り

がすぐに鼻をくすぐる。





お店に入ってすぐあるカウンター越しに、お父さー

ん！と声を上げれば、白い帽子をかぶった人がひょっ

こりと奥から顔を出した。





父「おう！おかえり！どした？」



「これ、お母さんが。」




ガサッと持ってきた紙袋をそう高くないカウンターに

置くと、頭にハテナを浮かべてお父さんは奥から出て

きて紙袋を覗いた。







父「あぁ〜！これだこれ！今日タカシに渡すやつ

だ！」




と、入っていた個包装された酒瓶を持ち上げて私に見

せる。





「タカシさんって、二軒先の八百屋で中学の同級生

の？」



父「そうそう！あいつ今日誕生日だから、後で渡そう

と思ってたの忘れてたよ！」







お父さんもお母さんもこの街で生まれ育ち、出会い、

結婚した。






中学からの同級生で飲み仲間でもあるタカシさんって

人も、この街にずっといると前に聞かされたことがあ

る。




でもそれはタカシさんに限らず、お父さんとお母さん

の友人はわりかしこの近辺にいるらしい。





この年代はこの街を出たがらないのか、なんなの

か…。






私だったら、絶対嫌だ…。








そんなことを思いながら、さすが母さんだな〜！と、

満足げに酒瓶をしまうのをカウンターに頬杖ついて見

つめていたら、




父「こらっ！そこに膝つかない！」




ぴしゃりと言われてしまったので、お店を後にしよう

とする。





父「なんだ、もう帰るのか。たまには店手伝ってくれ

ても、」


「宿題あるし、無理ー。」





ひらひらと手を振ってお店を出る際、背後からお父さ

んの呆れた声が聞こえた気がしたけれど、聞こえなか

ったフリをした。




ま、宿題なんて無いけどね。









昔はもっと活気があって、人で溢れていたらしいこの

商店街。



だけど、今では閉まったシャッターが多く感じられる

この道を一人家路へと歩く。






時々行き交う人は、テイクアウトしたコーヒー片手に

歩くオシャレな人ではなくて、野暮ったい格好をした

人がママチャリに乗っているか、おじいちゃんもしく

は、おばあちゃん。

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