24 過去の記憶 ページ24
禊を呼んだその声の主は要ではなかった。
「だ…誰ですか…？」
白くてサラサラのストレートヘア。藤の柄の入った白いレースワンピ。細い白い手足に、少し物足りない胸。
「その、写真の白い少女。」
禊は目だけを写真に向ける。
「その十年後が、僕なんだ。」
「は…？」
その人は禊の元に近づき、手をつかむ。
「覚えてないの…!?」
「いや、あの…。」
「ずっと…待ってた。待って待って、僕も忘れかけてた…。」
禊は本家の庭を思い出す。小さいころの嫌好と禊。その後ろにある白い影。いつも藤の下のベンチに座っていた。
「…ニノミヤ様…？」
「その名前はもうやめて…。」
「え、でも…。」
その人の声が戻る。
「これで、わかる？」
「声低い…!?え、要…？」
禊はただただ驚くばかり。
「ニノミヤ様は、要って事？」
「うん。」
要の目から涙がにじみ出る。
「いや…何で泣くんだよ。」
「なんか、怖くて…。」
「何で。」
「やっと会えたけど、嫌われたらって…！」
「嫌いになる理由がねぇよ。」
「だって！コレ女装…。」
「あー…。」
禊は困って頭をかくと、
「大丈夫。俺もこの前女装した(させられた)から…。」
「え…？」
「あー、うん。気にすんな。だからほら、泣き止め。」
禊は要の涙を拭う。
身長178�僂陵廚函�169�僂例粥�少し上にある頭に手を伸ばす。
「泣き止まねぇなぁ…。」
要は禊の肩に顔を押し付ける。
「とりあえず、着替えてから泣こうか…。」
「うん…。ズビッ」
要は寝間着に着替える。
「いつの間に風呂入ったの…？」
「夕飯食べて、禊が風呂入ってすぐ後。」
「気付かなかったわ〜…。」
要の部屋のベッドに二人で座る。
「服、ぶかぶか？」
「いや、大丈夫。要が細いから、そんなに大きくない。」
「良かった。」
要は禊の肩に頭を置く。
「…横になった方が楽なんじゃないか？」
「ううん。このままでいい。」
禊の胴に腕を回す。
「…他人の匂いがする…。」
「なにそれ。」
「自分以外の匂い。でも、…違う。」
「？」
禊はよくわからなかったが、とりあえず要の頭を撫でた。
「お前、泣き過ぎ。」
「寂しかったから…。」
「…ゴメン。俺には、その気持ちが分からない。“寂しいって”？」
「なにその質問…。」
「哲学？」
要は口を尖らせる。
「情けねぇ。」
禊は要の顔を撫で、笑う。そして、キスした。
柔らかくて暖かいベッド。
「あったかいベッドで寝たのは久々。」
「そうか。おやすみ、要。」
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作者名：聖 永遠/作者 字 | 作成日時：2016年5月1日 4時
