【完結】淡く柔い鎖 (ページ5)

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「……」
「でもほら、"俺らくらいかっこいいやつ" も全然いる訳じゃん。なんでそっちには行かねえんだろ」
「樹お前……」

松村くんの机を中心に、窓側の席を4つ借りて過ごすお昼休み。さも当然、みたいな顔をして話す田中くんに、奈緒と松村くんは引いたような顔をしてて面白い。

「……二人だから、じゃない？」
「ん？二人だから？」
「うん」

一人だったら選択肢はひとつだから、タイプじゃなければそれで終わりだけど。
選択肢がふたつ以上になると、「どっちがいいだろう」って考えるらしい。

熱中しやすいんだと思う。…二人は特に、正反対だから。

「へえ〜、なるほどねえ」
「大変かもだけど、二人の仲が素敵に見えてる証拠だよ」
「物は言いよう……」
「松村くん…(笑)」

唇を尖らせて、机に頬杖をついて、不服そうな顔。でも多分、内心は喜んでると思う。松村くんほんとうは、田中くんのこと大好きなんだ。

「あ、てか今日さ、みんな暇？」
「暇〜」
「パンケーキ屋さん行こ！」
「うえ、パンケーキ？あめーじゃん…」
「しょっぱいのもあるって」
「俺は…行けるよ、大丈夫」
「…えー、行くかあ」
「二人共言ったかんね？Aは？」
「あ、…私さっき先生に、放課後ホチキス留め頼まれちゃって」
「シバ先？」
「うん(笑)」

えー、空気読めてないわシバ先！って奈緒が頬をぷく、と膨らませる。かわいいなあ、って思いつつ、それを両側から押して潰した。

「…一人でやんの？それ」
「あ、ううん！日直だったから、お願いって」

もうひとりいるから大丈夫だよ、って松村くんに答える。

「えー…あ、そしたらうちら待ってるよ！中庭でバレーしてさ、」
「あー、球技は北斗がなー」
「…俺がちょっとね」
「え？そうだっけ？」

お前覚えてない？バスケやっててこいつ、顔面キャッチしたやつ。そう言ってクク、って笑う田中くん。
「お前、それもう擦るなよ」って松村くんが、照れたように田中くんにチョップしてた。

「あの…終わったら行くから、先行ってて？」
「えー、私一人でこいつらのおもりすんのやなんだけど」
「こっちのセリフだわ」
「右に同じく」
「はあ？」

バチ、と散った火花に、苦笑いが漏れる。なんですぐ喧嘩腰になるかな…。
「3人とも仲良しでしょ？ほらいいから、先行っててね！」って言い聞かせれば、「Aがいいなら…」って渋々納得してた。