【完結】淡く柔い鎖 (ページ15)

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お昼は毎週水曜日。放課後は、バイトや塾のない人が中心にやってるらしくて、ほぼ毎日、16時半まで。ここに入る前に、あの三人に言ったとおりになった。

「森本くん早いね？代わるよ」
「ん？…いいよ大丈夫。それより本読んでなよ」

昨日借りてってたでしょ、って言われて、「ばれてたか(笑)」ってカバンから本を取り出した。

カウンター内にふたり。やることと言えば、本の貸出や返された本の戻し、ポップ作りとか棚の整理だけど、来る人がそんなに多い訳じゃないから、仕事も必然的に少なくなる。

だから手が空いてる時間は、スマホを触っていてもよし、本を読んでもよし。うるさく騒がない限り、基本的には自由だった。

「そう言えば先生、リクエスト通してくれたって」
「え、ほんとに？」
「うん。さっき言ってた」

やった、ってこっそり喜ぶ。「楽しみだね」って隣で笑った彼に、首を縦に振った。

ひとつきも経てば、人は仲良くなれる。気づけば私たちはお互いにタメ口を使うようになっていたし、読んだ本の話で盛り上がるようになっていた。

私が絶対に読まないな、って本を彼は読んでいたり。かと思えば、好きな作者さんが同じだったり。

よくわかんないんだ、感性が。
でも多分、だからこそ彼と話すのは面白いんだと思う。

…それとは別に、もうひとつ。

このひとつきで、よくわからない変化があった。

スタ、スタ、って上履きが床をする音が近づいてきて、カウンターの前で止まる。パ、と顔を上げると、…そこに立っていたのは、松村くんだった。

本をカウンターに置いて「お願いします」って。
真っすぐに森本くんのことを見てる。

「学年、クラス、名前をお願いします」
「2年D組松村です」
「はい。…いつもありがとうございます」
「覚えてるんじゃないですか(笑)」

は、って笑う松村くん。…心なしか、言い方に棘のようなものを感じたけれど。それはもはや、恒例のことになっていた。