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ぐぅ、と腰を引かれる。足を止めたくても、……敵わない。目眩が、する。視界が暗く霞んでいく。
「…あれ、Aちゃん？」
── 不意に聞こえた声に、ぴくりと肩が跳ねた。瞬間、腰から外される腕。解放された感覚に、今すぐに逃げだしたくなる。けれど、ぐぅ、と堪える。
息を吸ったら、ひゅう、と喉がなった。
「やっぱり。Aちゃんだ(笑)」
「…しん、たろくん？」
「そうだよ(笑) なにやってんの？こんなところで」
「駅、あっちだよ？(笑)」ってゆるく口角が上がる。
「あ……うん、そうだよね(笑)」
感情のこもらない、乾いたような笑いが漏れた。それに慎太郎くんは少しだけ不思議そうな顔をして。「あ」って声。
「…あー……こんばんは、すいません突然(笑)」
「…こんばんは(笑)」
彼は、隣にいたその人に、本当に気づいていなかったみたいだった。まずい、って顔をしたあと、「えっと……上司の方？とかですか？(笑)」って無理やり話を振ってる。
「…ああ、まあ。そんなとこかな？(笑)」ね？と同意を求められて、……曖昧に、笑った。
「えー、っと……」
「…もういいかな？急いでるんでね」
口淀んだ彼を放るように。その人は私に「行こうか」と声をかけた。……いやだ、と思ったせいかな。足がこわばって動かない。「Aさん？」「…はい」必死に、一歩を踏み出す。
── すれ違うときに一瞬だけ、慎太郎くんの服をきゅう、と握った。助けて、慎太郎くん。気づいて。でも…気づかれたくない。面倒な思いが心の中を渦巻く。目は、合わなかった。合わせられなかった。
1歩、5歩、…10歩。そこまで数えて、やめた。だめだった。しかたない。そう言い聞かせる。気づかれなくてよかったんだ、って。…と、その時。
「── Aちゃん！」
「…え？」
後ろから、ぎゅう、と腕を掴まれて、足が止まった。……しんたろう、くん。
「っあー…のさ！ほら、2次会の余興！何やるかまだ決めてなかったじゃん！」
「…？」
「だからほら、…堀本の！結婚式の！2次会の！」
「……君、なんなんだい？」
「いや、ほんとすいません、えっとー…上司さん？ちょっとマジで大事なこと忘れてたの思い出して、だから…」
「Aちゃんのこと借ります！さーせん！」
掴まれた腕をそのままに、ぐ、と引かれる。足はすんなりと前に進んだ。バタバタと足早に進む私たちを、…多分、追いかけるなんてみっともないこと、あの人はしないだろう。
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みそ(プロフ) - ひよりさん» ありがとうございます。楽しんでいただけたならよかったです🙇♀️💚 (2022年5月31日 13時) (
レス) id: 4d278d62fc (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - めちゃめちゃにきゅんきゅんさせて貰いました🤍最高でした😍 (2022年5月29日 23時) (レス) @page24 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
miso(プロフ) - UwUさん» すいません、変換できないようになっていたので直しました💦教えて下さってありがとうございます…！！！！ (2022年4月12日 21時) (レス) id: ecadc79423 (このIDを非表示/違反報告)
UwU - 25の松村さんのセリフ「元の名字」ってどういうことでしょうか？？ (2022年4月12日 0時) (レス) @page25 id: aca0757d01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みそ
| 作成日時：2022年1月15日 22時
