13 ページ13
□□□□□□□□
「…う……」
目を覚ました瞬間に、あぁまだ生きているのだと。そう思った。
どうなったんだっけ。
F21は…あぁそうだ、投降したんだ。事実上の敗北。
起き上がろうとして、脇腹に鋭く深い痛みを感じた。思わず呻き声を上げると、こちらに駆け寄ってくる足音が耳に入る。
「あ、まだ寝ててください。傷口開いちゃいますよ」
まだ陽の光に対応しきらない視界に飛び込んできたのは、太陽よりも眩しい光を放つ焦げ茶色の瞳だった。
もちろん太陽よりも眩しい云々は比喩表現だ。
だが思わずそう例えたくなるほどに彼女の瞳はきらきらと輝き、その見えない光は俺へと降り注いでいた。
「体調はどうですか?白濱さん」
「なんで…俺の名前」
「あ、すみません、携帯されていた身分証で……患者さんのお名前は覚えておかないとと思って。私はAREA X0で外科医をしています、衛生班所属の蓮見Aと言います」
AREA X0の医者。つまり…
「ここはX0の…病院?」
「はい。領土戦争が一旦集結した後に、戦場で貴方が虫の息でいるところをちょうど私が見つけて。あと1時間あのままだったら危なかったですよ」
「…俺は君たちの敵だけど」
挑むような気持ちで彼女を見上げる。
Aと名乗った医者は、なんの躊躇いもなく微笑んでみせた。
美しい笑顔だった。
「医者に敵も味方もありません。目の前の命を救う。それだけです」
17人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かな - 続き楽しみです! (2020年10月10日 22時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ねこた | 作成日時:2020年9月17日 3時