スナックお登勢の末っ子さん【坂田銀時】 (ページ28)

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赤の他人がいようとそれは食卓ページ28

場所は違えど、姉の手料理はやはり美味い。

箸を止めずに咀嚼と嚥下を繰り返し、おいしいもっとおかわりが絶えない場面は、どこからどう見ても一般家庭の食卓だった。

ただそこに毛色の違う人間が数人紛れているだけで。

「何コレ。ニラ？めちゃくちゃ美味ぇんだけど」

「ニラだれです。色んな食材に合うんですよ。冷しゃぶとかにも合いますね」

「A!! たくあんヨロシ？」

「えっ、もう！？神楽ちゃんこれで3皿目だよ？小松菜のふりかけなんてどう？」

「む!! もらうアル!!」

「おや、美味い。ナスってこんなにトロトロしてたかい？」

「レンジで柔らかくなるんです。ナスも水分がいっぱいある野菜ですから」

「オイ、私ノグラタンハマダカヨ飯炊キ当番」

「ちょっと待ってくださいね。黒コショウかけますから」

「姉ちゃん!! 俺も白米、大盛りで!!」

「孝太郎もう食べたの！？舞茸食べて待ってて!!」

まだ未成年の子どもたち、スナックのママに顔が濃すぎる猫耳女、天パが混在したテーブルには厨房番が腕を奮った品々が所狭しと並べられる。

ポテトサラダにチーズを乗せて焼いた簡易グラタン、レーズンを混ぜたキャロットラペ、舞茸のバターソテー、ナスのレンチン浸し、ニラだれをこんもり乗せた冷奴、小松菜やほうれん草などの葉物野菜とじゃこを混ぜたふりかけ、箸休めのたくあんに梅干し、じゃがいもと豆腐の味噌汁、そして白米。どう考えてもスナックというより定食屋のメニューだが、暖簾を掛ける前であるのをいいことに各々の箸は止まらなかった。

ちなみに、お妙への連絡はしたものの留守だった。

「はい、キャサリンさん。お待たせしました」

「姉ちゃん、この人参サラダに何入れたの？すごい美味しい!!」

「キャロットラペね。バルサミコ酢入れたよ」

「バル○ン？」

「誰も殺虫剤の話してないよ」

「Aさん、すみません。お味噌汁ってまだありますか？」

「ありますよ。お椀半分くらいにしますか？」

「はい!! ありがとうございます」

「A様、トマトの湯むきが終わりました。次の工程に移ります」

「あっ、それは瓶に詰めます。あとはパプリカの皮を剥いて……」

給油を終えたたまも厨房に入り、Aのサポートに入っていた。トマト片手にうろうろしていたが、後輩の背を追って奥へ消える。どうやら何かに漬け込むらしい。

こうして見ると、本当にまめまめしく働いてくれる。いい拾い物をしたと、改めて思う女帝であった。