下手に影響力があるやつほど手が出しにくい ページ8
「で? 奴の姿は見えねぇが」
「ああ、すいやせん。取り逃しちまいやして」
「はァ? まだ奴ァ店から出てねぇぞ。どこをどう逃げたってんだ」
「いやぁ、それがですね。清水の野郎、俺が声かける前に何やら地味な男に捕まりやして。あ、ザキの分身じゃねぇからな。
んで、店の裏に引っ張られてたんでついてったら、なんとあの岡都々喜だっていうじゃありやせんか。俺もファンなんで話しかけたら、これがまあ話が盛り上がりやしてね。
ほら、サイン貰っちゃった」
「いや何をしてんだテメーは!!!!! なに元攘夷志士からサイン貰ってんだ!! ドヤ顔してんじゃねぇよ腹立つ!!」
「うぉっ!! マジの岡都々喜のサインじゃねえか!! いいなー、俺も本持ってくりゃよかった」
「やっぱり!! 俺処女作の【炎天下の五月雨】好きなんだよなー」
「山崎ィイイイイ!!!!!」
「ちょっ、なんで俺だけェ!?」
ドヤ顔でサインが書かれた書籍片手にピースする沖田、それにブチ切れる土方、羨ましがる原田、上司に理不尽にヘッドロックをかけられる山崎。場は混沌としていた。
ちなみに、清水Aが作家の岡都々喜と知り、一番に山崎が思ったのは「屯所に来たときサイン書いて貰ったらよかったな」だった。どこまでも私情を挟む男である。
「で、そっからどう取り逃しましたに繋がるんだ」
「その後なんですがね、打ち合わせがあるだとかで2人して出版社に向かうってことになりやして。俺もついて行きたかったんですがねィ、罪状ある訳じゃねぇし行けねぇやと思って戻ってきやした」
「チッ、器物損壊罪は立証されちゃいねぇし、肝心の倉庫の持ち主はブタ箱だ。まんまと奴の策に嵌められたってわけか」
「でも副長、清水Aが岡都々喜という事実は大きく世間を変えるかもしれねぇぜ」
「確かに元攘夷志士が人気作家とありゃあ、世論はひっくり返る。だが、それによる経済効果だって無視できねぇ。なんたって、幕府のお偉方も読んでやがるんだ。下手したらこっちがイチャモン付けられんぞ」
「そんなの、幕府の機嫌を損ねるどころか大衆の袋叩きにあいかねませんからね。リスクが大きいや」
「つーことで交代しやしょうか。俺らまだメシ食ってませんぜ」
「チッ。不完全燃焼たァこのことだな。
原田、山崎。もし清水Aがいたら問答無用で連れてこい」
「えぇっ、それ冤罪じゃないんですか」
「元攘夷志士ってだけで十分だろうがよ」
あとは頼んだ、と任された2人は、小さく嘆息した。
413人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スミカ - 物凄く面白いです。高杉との絡みが最高に好きです!決して行き過ぎたチートじゃないとこも好きです。応援してます (4月13日 17時) (レス) @page19 id: daf320e252 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年2月17日 21時