迫る監察、暴かれる昔話 ページ7
「……いやに遅ぇな」
待つこと1時間。
パトカー内にて交代の隊士とともに待機していた副長の手には、1箱目最後の煙草が据えられていた。
沖田が店内に入ってから清水Aの姿は見えていない。着替えでもされたら見抜けようもないが、江戸一番とはいえ書店。顔見知りがいる訳でもなく、未だ店内に潜んでいるのが妥当だと推測した。
「にしても、あの【天狩りの鷹】がねぇ」
「攘夷戦争じゃ、幾多の天人の命を
「ほぉ。そら楽しみだ」
「んで、奴さんはなんでまた書店なんざに来てんだ?」
「それが分かったら苦労しねぇよ」
後部座席にて待機するのは、十番隊の原田と監察の山崎だ。本来ならば平隊士が来るのだが、かの攘夷志士がいるとなれば生半可な隊士では不足だと判断し、急遽土方が変更を命じた。
はあ、と吐き出した副流煙が車内に充満する。山崎はこっそりドアを開け、懐の監察ノートでぱたぱたと扇いだ。
「そういえば副長。現在の清水Aについてなんですが、気になることが」
「ァあ? なんだ。くだらねぇことだったら切腹させんぞ」
「ヒェッ、やめてくださいよ。結構頑張って得た情報なんですから。
えーとですね、清水Aが現在所持している家は2軒。今住処にしている家屋と、小さなアパートだそうで。以前、踏み込んだときに家具だのなんだのって、一切合切無かったでしょう? あのとき、全部をそのアパートに放り込んでたそうなんです」
「あれを、一人でか?」
「もしくは協力者がいたかもしれませんが、まだそこまでは。
で、ここからです。清水Aは基本的に外出はしませんが、時折現住所に訪問する男がいます。身元を調べたところ、出版社に務める者だと」
「出版社だァ?」
「名前は鹿嶋 悠介。大江戸出版の文学編集者だそうで、それなりに長く勤めてるそうですよ。
んで、その鹿嶋が担当する作家は複数人いるんですがね。そのうちの一人っていうのが……」
「おや、ザキじゃねえか」
「沖田隊長!!」
「総悟!! テメェ一人引っ張ってくんのにどんだけ時間かけてんだ!!」
「いやぁ、すいやせん。つい話が盛り上がっちまいまして」
ちっとも悪く思っていない沖田の謝罪に土方が舌を打つ。話を遮られた山崎は、一旦監察ノートを懐にしまった。
下手に影響力があるやつほど手が出しにくい→←白昼堂々としていればどんな人間でも大抵その場をやり過ごせるもんだ
413人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スミカ - 物凄く面白いです。高杉との絡みが最高に好きです!決して行き過ぎたチートじゃないとこも好きです。応援してます (4月13日 17時) (レス) @page19 id: daf320e252 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2024年2月17日 21時