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暗躍せし三味線の調べ ページ18

ぺぺん

べんべんべん、べべん


薄ら雲に隠れた半月。

白く淡いスポットライトが男のシルエットを映し出す。


片足を上げ、奏でる三味線は膝に立て掛けられ。

色男の造形は動くことなく、無情に音を紡ぐ。


ぺぺん

べべべん、ぺぺん

ぴん、


「晋助」

「……首尾はどうだ」

「良いとは言えぬ。奴らめ、紅桜や伊東の件から警戒心が強くなった。ここで無理に張り巡らせても気取られるだけでござる」

「そうかィ」


独奏(ソロ)から二重奏(デュエット)に変えたのは、高杉の右腕たる河上万斉。サングラスの奥は読み取れず、べんべんと弦を操るばかりだ。


「そういえば、ぬしが気にかけていた男だが」

「………清水か」

「白夜叉に加担するでも、桂に賛同するでもなく。ただの作家として活動しているようにござる。真選組との関係も希薄に等しい。此方に引き込むのは無謀と見える」

「あいつに関しては触れるな。俺達の計画の邪魔になる」

「【鷹】の餌食になる、と?」

「奴の爪で脳髄を貫かれてぇなら止めやしねぇが」

「……やめておこう。拙者には鷹狩りはちと荷が重い」


【天狩りの鷹】

攘夷四天王には及ばずとも、その名を轟かせた逸話はあまりにも有名だ。

敵陣の命を瞬く間に奪う非情な男、百発百中の弓矢の腕はかの那須与一に相当する、幾千里先の獲物を肉眼で捕えられることができた、等。

見た目はただの優男。しかし、戦場で敵を狩る姿は一切の情を見せない。獲物を狩るのは一瞬で、圧倒的な強さは当時誰の耳にも届いたものだ。

まさしく、天空の覇者たる名が相応しい男だった(・・・)


そう、『だった』のだ。

今はすっかり牙を抜かれたのか、覆面の作家として活躍する傍ら攘夷の動きは何も見せない。以前、違法に関与していた幕臣の騒ぎには一枚噛んでいたらしいが、後にも先にもそれだけしかない。それも、表立って敵陣に乗り込むのではなく、幕臣所有のヘリを破壊したというだけで。

元攘夷志士として真選組より事情聴取を受けたものの、結局すぐに解放されている。立ち位置で言うなれば、かぶき町の万事屋と似たようなものか。


あの男の鼓動(リズム)は読めん。

それが、河上万斉が清水Aに下した評価であった。


「アイツの爪は錆びちゃいねぇよ」


べべべん、

べべん


重なった弦の調べが部屋に木霊する。ぼそりと呟いた高杉の音色を拾ったのか、否か。

月を憂うその横顔が案ずるのは、世界か師か、果たして。

ガス代と水道代と入浴剤の代金はまとめて請求されました→←本当に強いのは力でも頭脳でもなく、兵糧攻めに耐えうる農家である。



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スミカ - 物凄く面白いです。高杉との絡みが最高に好きです!決して行き過ぎたチートじゃないとこも好きです。応援してます (4月13日 17時) (レス) @page19 id: daf320e252 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pillow | 作者ホームページ:   
作成日時:2024年2月17日 21時

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