ダンボールと公園とマダオ ページ11
流れる雲を見て、あれは定春の眉毛に似てるだの煙草のケムリ臭いだのグラサンを掛けた人間が見えるだのとごくごく普通の会話が弾んでいた。
いつの間にかベンチ脇に移動していたダンボールに人がいたのは驚いたが。
長谷川さんなる人に持っていた金平糖を渡すと、涙を流して食べた。ちっちゃく、砂でも齧るようにぽりぽりと。
せめてこれで何か美味しいものでも食べてくださいと、二千円を取り出そうとしたところで銀時に掠め取られ新八にまとめて鼻フックの刑に処されていた。
二千円札はいつの間にか、財布の定位置に収まっていた。
「ちょっとォ!! せっかくオネーちゃんが俺のために金銭恵んでくれるっつーのに、そりゃあねぇんじゃねぇの!?」
「このお金はAさんが朝から晩まで文字通り身を削って働いて稼いだお金なんですよ。まずは働いてください、このマダオが」
「酷い!! 新八くん、そんな辛辣だったっけ!?」
「いえ、ただそこにいるだけで金を恵んでもらおうとする根性の卑しさがちょっと」
「俺の扱い何だと思ってんの!? そらさァ、食料ゴミ箱から漁ったり寝床がダンボールだったり自販機の下にある小銭取ろうとかしてるよ? でもよぉ、毎日頑張って生きてるホームレスにそりゃあないんじゃないの?」
「ただの意地汚ぇホームレスじゃねーか。ナニ健気に生きてる風に語ってんの? 涙の数だけ強くなれるってか? テメーの涙なんざそこら辺の雑草の栄養分にすらなりゃしねーよ。つか、たまに鍵開けて押し入れ住んでるアンタが誰より薄汚れてんだろ」
「ハナクソ飛ばしてくんのやめてくんない!? そもそもこうなったのは誰のせいだと思ってんだ!!」
「おめーがあのバカぶん殴ったからだろ」
「いやその前にバカのペット殺したのお前ェエエエエ!!」
マダオ同士の諍いをやれやれと肩を竦めて放置する新八は、もうすっかり万事屋の日常に慣れきってしまっている。
Aはというと、財布を懐にしまってきっちり紐を結んだ。あまりお金をあげると執拗に迫られる、とたった今隣の眼鏡から教わったばかりなので。
傍らに寝そべる定春がとろとろと眠りかけたので、そろそろ戻りますかと立ち上がった。
マダオの最底辺の争いはいずれ飲み屋で終わる。実際、銀髪のマダオを飲み屋まで迎えに行った経験者は語る。
「朝には玄関にいるんで、大丈夫ですよ。
良かったら、今日ウチにご飯食べに来ますか?」
「いいんですか? じゃ、お登勢さんに連絡しときます」
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ゆき - 面白いっす (2021年5月6日 20時) (レス) id: c80af731ce (このIDを非表示/違反報告)
??ただのアニメ好き★(プロフ) - お話とても素敵で楽しくて銀魂って感じ(?)がします!密かに応援しています!頑張ってください!面白可笑しく時には切なく読ませて頂いてます! (2021年4月29日 9時) (レス) id: 07e5d6fa1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年4月19日 13時