関係者って言うほど信頼性はあんまりない ページ34
真選組は引き返したらしい。よかったと安堵したのもつかの間、がんがんと戸を叩く音で呼ばれた。
すりガラスの向こうには、黒服のシルエット。面倒なことしか思い浮かばない。
渋々、半纏とマスクをして小さく戸を開けた。
「……はぁい」
「真選組だ。清水Aだな?」
「あぁ、はい……そうですけど」
「桂について事情を聞きたい。屯所まで同行願おうか」
あくまで頼む姿勢だが、拒否権はない。任意という建前の強制連行だ。
しかも、相対するのがかの真選組の頭脳。ゆっくり療養することも許されないのだろうか。
「どれくらいかかります?」
「お前の供述次第だ。素直に吐けば半日で出してやる」
「刑務所みたいな言い方だな……」
「なんか言ったか」
「いいえ、なんも」
今は善良な一市民なのだ。もし攘夷戦争のことをほじくり返されたらめんどくさいことこの上ない。ああ、怠い。
ちょっと待っててくださいとその場を離れ、風邪薬を飲んだ。熱は下がったが、まだ頭痛はする。
原稿は後でいいや。編集担当の人に書き置きを残し、財布と携帯電話を持って外へ出た。
戸締まりをして、パトカーに乗り込む。
肌寒いな、と身震いした。
到着したのは、真選組屯所。木造平屋の中々広い家だ。
手錠を掛けていないのは、あくまで事件の参考人という体を保つためだと分かっていた。もし、余罪があるのであれば真っ先に冷たい輪っかがかかっていたことだろう。
先をゆく真選組副長が、振り返らずにずかずか進む。
「【鷹】を、知っているか」
「いいえ。新種の鳥ですか?」
「攘夷戦争で、桂や高杉と並んで活躍した元攘夷志士と聞く。特に、狙撃が得意だったと」
「ふうむ」
「桂がお前の邸宅に潜伏していたのは偶然か? それとも、必然か」
「それはご本人にお尋ねください」
重厚な扉が開き、黒服の男達が一斉にこちらに目を向けた。
チンピラ警察と揶揄されるだけある眼力に、それをものともせず受け流す鬼の副長。ヤクザの総本山とかじゃないんだろうか、ここは。
入らされたのは、如何にもな重く冷たい空気を纏った狭い部屋だった。
机がふたつ、椅子が三つ。入口の正面に鉄格子がはめ込まれ、恐らくその向こう側に幹部勢が構えているのだろう。
着座を命じられ、パイプ椅子に腰掛けた。あまり座り心地は良くなかった。
「さて、始めようか」
「どうぞ、お手柔らかに」
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うす - 更新ありがとうございます…!この作品が大好きです応援してます! (9月19日 22時) (レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、! (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね!すごく楽しみにしてるので嬉しいです!無理のない範囲でこれからもお願いします! (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです!次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月1日 15時