普段誰かいる家は、一人になると途端に寂しい ページ4
銀さん寄っていきなよ、と顔見知りらしいキャバ嬢や風俗店の店長が顔を出す。
オウ、またなとひらひら手を翳すのは顔が広い万事屋ならではというところだろうか。
「そういえば、お家の子達は？」
「新八は帰ってぇ、神楽は泊まりィ。だから俺一人」
「うわ寂しい」
「るせぇ。一人暮らしのテメェにだけは言われたくねぇ」
「一人暮らし、案外楽だよ。誰の気も遣わなくていいからね」
「……ま、殴る野郎もいねぇしな」
「うん」
ほけほけした眼鏡野郎は、今はもう作家として自立した生活を送っているが、幼少の頃は人間としても見ていられないほどの日常を過ごしていた。
そもそも、銀時達との出会いも唐突だったのだ。河川敷を歩いていると、向かいからやけにみすぼらしい着物を着た子どもがふらふらと歩いてきたのだ。
それを、恩師たる松陽が受け止め、どうしたんですと尋ねた。息も絶え絶えな彼は、お酒を買いに出たら買えなくて、仕置きとして外に出されたのだと話した。
当時、銀時をはじめとした戦争孤児は多くいた。桂のような武家の出もいれば、高杉のようなボンボン、親が共働きで家族の面倒を見る子どもも多かった。変わりゆく世の中で、みな様々に生きようと必死だった。
戦争で仕事を失い、侍として刀を奮う人間もいれば自暴自棄になり八つ当たりする者もいる。彼の親は後者だったようで、銀時達と同級の年頃であろう彼はひょろひょろとしてちっとも肉がついていなかった。
村塾に連れ帰った松陽が手当を施し、少ないですがと握り飯を恵んだ。お米が柔らかい、と呆けた感想が零れたのをよく覚えている。具はツナマヨだった。
よくよく話を聞けば、父親は普段から暴力を奮うらしい。勉強したいと言えば、「する必要はない。お前は家事をやれ」と言うような人だった。
では母親は、と聞けば実母は物心ついた頃から居なかった。失踪したのか、亡くなったのか。その真偽は分からない。
義母はいたが、顔を見れば嫌味を言い、虫の居所が悪ければ蹴る。主に顔をやられていたため、血なのか涙なのかよく分からないものが垂れていると話していた。
全てを聞いた松陽は「しばらくここに居なさい。せめて貴方が人間の相貌でいられるまで」と村塾への滞在を許したのだ。
彼にとって、誰かいる家というのは過去を思い出させる。地獄のような家があれば、安寧の家もあった。攘夷戦争時代は、無論集団での生活だった。
一人暮らしを知らない訳では無いが、多分彼とは違うものだ。
男は黙って焼酎ロック→←食欲と睡眠欲はなんとか持って生きてます
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うす - 更新ありがとうございます…！この作品が大好きです応援してます！ (9月19日 22時) (
レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、！ (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね！すごく楽しみにしてるので嬉しいです！無理のない範囲でこれからもお願いします！ (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです！次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pillow | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月1日 15時
