ナンバーワンのおもてなし ページ25
助けてくれたお礼に、と半ば強引に腕を引かれてテーブルについた。傍らの女性はこの店No.1のキャバ嬢だという。お妙です、と紹介してくれた。
なにか見覚えがあるなと思ったが、遠くの記憶から引っ張り出しても面影がない。
メニューを手渡され、あまり飲めないんですと言うとソフトドリンクの欄を示してくれた。ちなみにまだ昼である。
「こういったお店は初めてですか？」
「ええ、まぁ。あまり外出もしないもので」
「あら、お仕事は何を？」
「作家業を細々と」
「まぁ、どんな本を書かれるのかしら」
「主に小説ですね」
嘘は言っていない。たまにテレビで特集を組まれたりもするが、ぶっちゃけ自分よりも名の売れている作家は山ほどいる。それこそ、筆だけで生計を立てているような作家も。
デビューしてまだ経験が浅いのだ。こういうものですと名刺を出してもメモ代わりに使われるのがオチだ。そもそも、名刺持ってないが。
頼んだ烏龍茶とお妙の緑茶が届いた。まだ営業時間ではないが、こうしてお客を招くことは特別ではないらしい。
グラスを軽く掲げ、目視で乾杯した。
「お酒はあまり飲まれないのかしら」
「結構弱いんです。飲むとすぐ赤くなってしまって」
「まあ、ではお酒の席だと大変なんじゃないかしら？」
「めちゃくちゃ薦められるんですけどね。どうしてもってときは、強い人にスライドします。あとお酒好きな人に」
「お上手なのね。お酒の失敗なんてないんじゃないかしら？」
「いや、まぁまぁありますよ。酒量が分からなくて、ちゃんぽんやったりしたことも……」
キャバ嬢というだけあって、お妙は聞き上手だ。会話を回すのが上手いことや、どこまで踏み込むかのボーダーラインも分かっている。
今手にしているグラスが酒類であったらガンガン飲まされていただろう。話せば喉は乾く、グラスに口をつける回数が増える、飲み物を頼む、のループが完成される。この循環は到底抜けられそうにない。
そして、彼女の面影を思い出した。以前、坂本と銀時を店先で叱責していた女性だ。大の大人二人の扱いをよく分かっている。あの二人は、特に扱いがめんどくさい。
「清水さんたら、お上手ね」
「そうですかね？ 褒め言葉なんて、よく知らないもので」
「言い回しが上手いはずだわ。さすが作家さんね」
「ありがとうございます」
その辺りでお妙ちゃん、と声がかかった。そろそろミーティングらしい。
キャバクラを後にして思った。結構楽しい。
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うす - 更新ありがとうございます…！この作品が大好きです応援してます！ (9月19日 22時) (
レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、！ (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね！すごく楽しみにしてるので嬉しいです！無理のない範囲でこれからもお願いします！ (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです！次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pillow | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月1日 15時
