清水さんちのお昼ご飯 ページ23
筆が進めば後は早い。ひたすらサラサラ書いていけばいいのだ。サラサラサラサラ書いていく。原稿用紙は十分にある。
外に干しておいた下着のことはすっかり頭から抜け落ち、万年筆のインクで指先が染まっていく。
サラサラからガリガリに変わり、気づけば太陽は真上に登っていた。頭を使えば腹も減る。
一旦区切りをつけ、腰を上げた。いやに重いなと感じ、ぐるりと回した。
昼飯は抜こうと思ったが、いや戦国時代じゃあるまいしとそうめんを茹でることにした。つゆは出すのが面倒なので、半熟卵と専用醤油を垂らしたものに絡めていただく。
一束茹で、ちゃっちゃと水で締める。世の中には「そうめんでいい」と言う輩がいるらしいが、そうめん茹でてから言いやがれと思う。清水もすっかり主婦脳だ。
清涼感のある皿にそうめんを盛り、大葉をちぎって載せる。半熟卵醤油タレも運び、冷たい緑茶とともに食べた。うん、美味い。
昼の番組は、大抵バラエティかワイドショーだ。昼のバラエティは生放送ということもあって、こっちがハラハラしたりする。何事も編集がきく方がいい。
ずるずるとそうめんを平らげ、食器を下げたときに気づいた。台所洗剤があと少ししかない。
ストックは、と床下収納を見ても無いものは無い。ドラッグストアのクーポンがあったはず、とチラシを確認すると本日一回限りの割引券があった。いやケチだな。
残り少ない洗剤をスポンジに絞り出すと、ちょっとしかなかった。小指の爪もない。
がちゃがちゃと洗い、水切りかごに伏せて支度をした。今朝方、外にはしばらく出られないと決心した矢先にこれだ。
襦袢、着流しを身につける。羽織を羽織っても、項の花は隠せそうにない。
と、そこで箪笥の奥に隠れた首巻きを思い出した。編集部の誰かの実家が絹織物の卸屋だとかで、是非にと貰ったのだ。
引っ張り出したそれは深緑色をしており、見ようによっては摘みたての茶葉のようにも見える。
ぐるぐると巻き、なかなか洒落たように見える。
そういえば、傘を忘れずにと言っていたはず。小さな折り畳みのそれを懐に入れ、財布の中身を確かめて足袋を履いた。
草履を履き、玄関先で鍵を閉める。がたがたと確認して、そうしてもう一度鍵を開けた。
クーポンとマイバッグ忘れた。
目当ての商品はすぐに手に入った。ついでと、洗顔料に化粧水と乳液なるものも買ってみた。レジに持っていくときはなんとなく気恥しかったが、買ってみると案外そうでも無かった。
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うす - 更新ありがとうございます…!この作品が大好きです応援してます! (9月19日 22時) (レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、! (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね!すごく楽しみにしてるので嬉しいです!無理のない範囲でこれからもお願いします! (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです!次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月1日 15時