教室の窓側の席になると途端に先生から怒られやすくなるよね ページ29
冷ややかな眼を向けられる銀時はしれっと茶を飲んでいた。盆に戻された湯呑みは4つと、傍らに空になった皿が置かれている。そこにあったはずの饅頭は大食い娘の胃液で消化中だ。
縁側でのんびりと過ごすと、膝に置いてある携帯電話が震えた。隊士から支給された旧式のもので、Aのみ使用権が許されている。
かぱっと開き、たどたどしくボタンを押した。スピーカーを耳にあてると、悲壮感漂う若い隊士の震えた声が鼓膜に伝う。
はい、はいと事情を聞き、携帯を閉じてすっくと立ち上がった。
「おっ、出勤お疲れさんでーす」
「すぐ戻りますね。もし山崎さんに会ったら、お菓子のこと伝えましょうか?」
「いえ、そこまでしていただかなくても……」
「こんなんじゃ足りねーって言っとくアル!!」
「全部食ったのお前だろうが!!」
「んふ、うん。言っとく」
じゃあ、と裾を翻し屯所奥へ姿が消える。夕焼けを溶かしこんだような鮮やかな赤が、やけに瞼の裏に残る。
休日のオヤジのように寝転がり、暖かな日差しの恩恵を受けてうとうと微睡む。教室で窓側の一番後ろの席に座る生徒の気分だ。
新八もほっと息をつき、そよそよと流れる風に遊ばれている。
饅頭がなくなり、手持ちの酢昆布で腹を満たそうとする神楽も柔らかな陽光をご機嫌な様子で浴びている。夜兎族の彼女の弱点は日光だが、太陽が時折雲で覆われることもあり傘を差す様子がなかった。
「いいお天気ですねぇ……」
「こんな日はアイス食べたくなるネ」
「奢ってもらうか。あいつらに」
「キャッホウ!! 私ストロベリーがいいアル!!」
「俺バニラ」
「僕はクッキーかなぁ」
「んだぁ新八、クッキーとか洒落たの食ってんじゃねぇぞ。黙ってお前はソーダ食ってろ」
「えぇっ、ひどくないですか。美味しいじゃないですか、クッキークリーム」
「若ぇのがチャラついたもん食ってんじゃねぇぞ」
「バニラとか言うアンタもアンタですよ。医者から止められてるって、この間も言ってませんでした?」
「さぁな、知らねぇ」
「新八、銀ちゃんの糖分依存症はもう手遅れネ。孤島で孤立してる兵士状態アル」
「医者から電話かかってきましたよ。定期検診来ないから、こっちから行きますよなんて言われちゃって」
「うぇ、マジか」
舌を出した銀時と、ため息をつく新八。茶も飲み干した神楽は通りがかった新米隊士に茶と菓子を要望した。
戸惑いながらも、煎餅と茶葉を入れ替えた急須を持ってきてくれた辺り有能である。
知らず知らずに子は育つ→←しばしまったり、万事屋さんとお姉ちゃん
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時