万事屋、起床 ページ23
慣れない布団だと、意外に目が早く覚める。
といっても、屯所内ではまだ遅い方だ。朝6時を回ったそこは静まっており、普段は騒がしい反面不気味なほどなんの音もしなかった。
万事屋で最も早起きな新八は布団を畳み、神楽と銀時ももそもそと起きる。
勝手知ったる屯所の間取りは把握しており、厠で顔を洗ってその辺にあった手拭いで顔を拭いた。
腹減ったな、と腹部を摩る銀時の耳が小さな響きを拾う。幼少の頃から聞き慣れたそれは、どうやらムサい男どもの声帯からも産み出されるらしい。
ちょっと行ってみようぜ、と茶々を入れる目的でニヤニヤする銀時と、面白半分でついていく神楽。屯所の稽古も見てみたいと、一応塾頭の新八も後に続いた。
そして、そこで見た光景に息を飲む。
「ぐぁっ!!」
「ごぇっ!!」
「ぉがッ!!」
なんだコレ、何コレ。
吹っ飛んでんの誰だ、チンピラ警察と揶揄される強面の男どもじゃないのか。
その中心にいるのは誰だ、いつもスナックで手料理を振る舞う新人さんじゃないのか。
ちょっと待て。昨日の楚々とした女の子はどこへ行った。
「そこまで!!」
号令と共に竹刀が下ろされる。天を仰ぎ、もしくは突っ伏し、または横たわるのは総じて公務員からかけ離れた顔面で恐れられる隊士たち。
少し離れたところで見やる隊長たちは、みな腕を組んでうら若き師範代を捉えている。
「うぉいおい、ヤベーよ何コレ。チンピラ警察のくせに負けてんじゃん。いつもの野犬みてーな威勢どこ行ったの、チンチラじゃんコレ」
「A凄いアル!! 北斗○拳の継承者だったアルか!?」
「北○百○拳は指でしょ。竹刀使わないから」
「お前はもう、死んでいる」
「生きてるわ!! 何勝手に殺してんの!!」
「いーだろ、税金泥棒が少し居なくなりゃ俺たちが納める税金だって少なくなんだろ」
「ならねーよ!! なに残忍な方法で社会制度変えようとしてんですか!!」
ぼそぼそと話す万事屋をよそに、稽古は滞りなく進んでいく。
再起不能になった隊士が続出したため、稽古はこの辺でと終わることになった。
隊士らもやりたくないだろう。まさか、子どもだと侮っていた彼らに負けるなど無様な姿を晒したくはない。
黙想、礼と進み、稽古は終わった。
途端、まだ生存していた隊士らが一斉に駆け寄る。誰にって、Aや龍之介にだ。他の門下生らも押されている。
「さっきのアレどうやったんだ?」
「小僧、やるなぁ!!」
「どうだ、真選組入らねーか!?」
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時