監察は観察する ページ14
さて、山崎はというとマヨボロ12カートンのお使いを終えた後に屯所へ戻ろうとしたところ、ぽつぽつと雨に降られたところである。
なんとか煙草は死守したものの、雨模様は一層激しくなるようで止む様子がない。
お天気お姉さんは晴れだと言っていたのに。傘を持参すればよかったと後悔しても遅い。
「ひぇーっ!!」
そこへ、山崎の隣に男性が駆け込んできた。黒の袴に鼠色の着物を着た中肉中背の男だ。
その手にはA4サイズの茶封筒が抱えられており、手離したくないのか小脇に抱えたまま手拭いで頭を拭いている。
封筒が煩わしいのだろうか、それを持ったまま袖を拭うのは難しいんじゃないかと山崎が声をかける。
「あの、それ持ってましょうか」
「え?」
「封筒、持ったままじゃあやりにくいんじゃないですか?」
「あ、あぁ……じゃあ、お願いします」
おずおずと差し出された封筒を受け取り、何も見ませんよのポーズを取って軒先を見つめる。
ばしゃばしゃと水音を立てながら走る人は少なくないようだが、雨宿りよりも一刻も早く家に帰りたい人間が多いらしい。
止まないかな、とぼんやり曇天を眺めていると、ふと自分の腕が冷たいことに気づいた。
受け取った封筒だった。少し濡れたのか、じんわりと濃くなっている。
持っていた手拭いでささっと拭き、ついでに宛名も拝見する。いつどこで情報が手に入るか分からない。こうした些細なことも目にしておかなければ。
宛先は大手の出版社だった。小説などの文芸の編集部である。
ということは、この男性は編集者だろうか。原稿を受け取ったところで雨に降られては、せっかくの苦労も水の泡になってしまう。
「あの、ありがとうございました」
「ああ、いえ。急に降りましたもんねえ」
「まったくです。せっかくいい天気だったのに、予報は外れですね」
「そうですねえ」
天気ほど盛り上がらない話題はないが、それでも真っ先に上がる会話のうちの一つだ。
ざあざあと雨足が強くなるのを眺め、はぁとため息をつく。
「お使いですか」
「ええ、まぁ……上司に頼まれたもんで。
おたくもですか?」
「ええ、似たようなものです」
「お互い大変ですねえ」
「本当に」
やや小降りになったのを認めて、一足先に山崎は路上へと踏み出す。
では、と会釈して屯所へ駆けた。
封筒の宛先は、大手出版社の文芸編集部。
著者名は『
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たまごどーふ(プロフ) - 銀魂の男主小説、最近数少なくなってるので読めるのがとても嬉しいです…更新頑張ってください! (2021年2月19日 23時) (レス) id: 45f2a26062 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月28日 21時