薄れゆく駿河への道 ページ45
おや、とは思ったが最短で手に入るチケットが来月の頭になりそうなので、それまで待つことにした。
もしかしたら寺子屋の旅行シーズンかもしれない、幕府のお偉いさんの慰安旅行じゃないのかなどと様々な予想を立てて推測がなされた。
その時は、まだ封筒いっぱいに入った便箋に何の不信感を持つことは無かった。
休業要請が解除され、元の活気を取り戻してもAが雑貨屋の針子をやめることはなかった。仕送りのお金や新しく買ってやりたい布団のこともあったからである。布団といってもピンキリだが、なるべくオールシーズン使えるようなものがいいとそこそこの値段が張る。そのために仕事量を増やし、収入を得ることで布団購入に全力を費やした。
ちなみに、布団はあるにはあるが長年使用していることやシーツの黄ばみがだいぶ目立っていたため買い換えを検討していた。しかし、そもそも金銭がないことと大きな家具屋がなかったため断念していた。
A自身、朝から晩まで働くスタミナが十分にあったため目標金額には予想より早く到達した。すぐさま人数分の布団を購入、実家宛に郵送を頼んで手紙を送った。仕送りも定額送り、よしと安心したのがいけなかったのかもしれない。
そこからだ。家族からの手紙が途絶えたのは。
「……うーん、」
「A様、申し訳ありませんが家賃の回収をお願い致します」
「んん……」
「A様」
「………んん゙ー…」
「A様」
「っあ、はい。何でしょう…」
「お登勢様から、家賃の回収に向かうようにとのことです」
「あぁ、はい。分かりました」
手にしていたホウキをたまに預け、二階の万事屋への階段を登る。かん、かんと軽い音を立てて玄関口に立つ。
ぴんぽん、と呼び鈴を鳴らして声を掛けてみる。
「ごめんくださーい、大前です。家賃の回収に参りましたー」
返事がない。留守かもしれない。
いや、小さいが声が聞こえる。息を潜めて耳をそばだてると、神楽と銀時がコソコソしている会話が聞こえた。
「もし立てこもったら意地でも玄関を開けろ」という言いつけ通り、がらりと開けてみる。すると、開けられる。
「うそ……」
留守を装っているのだろう。あちらこちらの電気が落とされ、居間には人っ子一人としていない。
がた、と何かにぶつかる音がして、そちらに向かってみると、ちらりと覗く銀色の天然パーマ。
思い切って、飛び蹴ってみた。
「そこだァァァァァ!!!」
「「「ぎゃああああ!!!!」」」
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時