スナックお登勢の新人さん【坂田銀時】

ボジョレーヌーヴォーって解禁されても騒ぐのは一瞬だけ ページ43

万事屋の働きにより、件の寺院並びに江戸周辺の神社や寺に潜伏していた天人や売人は検挙され、真選組が珍しく讃えられる新聞が一面を飾った。ピースサインを向けている沖田の後ろで、振り向きざまに怒り顔を見せる副長がいる。

新聞をぐしゃりと潰した神楽の背後を通りかかる新八は「掃除に使うから捨てないでね」と釘を刺す。

今回一番の功労者である銀時は、依頼主の住職をはじめとした被害にあっていた寺院の住職、僧侶から礼を言われ予想以上に依頼料を頂戴しウハウハだった。
が、それをパチンコに使う暇もなく、すぐさま大家が仕向けた刺客(たま)により家賃を回収され、残った金額は生活費に回すために新八に没収された。

細々とした生活に逆戻りだが、白米が食べられるだけマシだと思え。

新八は久しぶりに貰った給料を道場再興、追っかけをしている寺門通の期間限定盤アルバムに費やすことにした。

神楽は酢昆布と飾り物に使うことにした。女子会でお妙やAが身につけている簪が気になったのだろう、自分に合う簪が欲しいアルとにこにこしながら楽しみにしているようだった。


「そうかい、よかったじゃないか」

「フン、青臭イ小娘ガ生意気ナンダヨ。頭ニ何カ飾ッタトコロデオメーが可愛クナレルト思ウナヨ」

「なんだとテメー!! 似合わねーアクセサリーしてるお前に言われたくないアル!!」

「生マレツキ猫耳付イテンダヨ!! 残念ダッタナ!!」

「オメーの顔面が猫耳台無しにしてること気づいてねーのか!!」

「ナンダトコノヤロー!!」


猫耳団地妻と夜兎の掴みあいをばしんと叩いて諌めるお登勢。傍らに控える看板娘はモップを構え、今にも火炎放射を発射しそうな勢いだ。

狭いカウンターで騒ぐなと怒鳴る銀時をよそに、女たちの戦いは止まらない。

2週間の休業が解除され、酒類の提供解禁となった今では昼から酒を求めて暖簾をくぐるお客が多い。

銀時も例に漏れず、正午から日本酒で唇を湿らせている。


「で、おめーはそこで何やってんだ？」


投げかけた先には、カウンターの端っこで何やら熱心に紙を見つめているAの姿がある。

テーブルに白い封筒があるところを見ると、家族からの手紙だろうか。


「昨日、返事が届いたんです。お荷物ちゃんと届いたよって、みんなが」

「へぇ、兄弟？」

「はい。弟が2人と、妹が3人です」

「あららァ、お父さん随分頑張ったのね。

つーことは、おめー長女か。親とかどうしてんだ」

「あぁ、両親はいないんです」

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