鬼がやってきた ページ21
その日の万事屋はいつもの如く、依頼がなければ大家の家賃回収や督促もない、つまり良くも悪くも平和な時間をただ貪っていた。
それが崩れたのは、正午を過ぎてしばらく経った頃。
腹が減ったと騒ぐ神楽の要望で、具なしの炒飯を作って遅めの昼食を食べていたとき、インターホンが鳴ったのだ。
はあい、とパシリがすっかり染み付いた新八が玄関に赴き、その隙に神楽が新八の小丼に残っていた炒飯を自分の丼に移動させた。万事屋は弱肉強食である。
「え、土方さん?」
「おう、メガネ」
珍しい客人に驚く新八は、美丈夫な鬼の副長の後ろに佇むスナックの新人を目にし、まさかと瞠目する。
それは眼鏡のレンズをかち割りそうな勢いで、状況を読み込めない従業員をよそに土方は続ける。
「お前が予想してるようなこたァねぇよ」
「あ、違うんですか?」
「お前らんとこの社長とは違ってコイツはまだ誠実だ。
攘夷志士を名乗る男が窃盗と器物破損罪で逃げ回ってるっつー連絡を受けてな。追い回してたところを、コイツがとっ捕まえやがった」
「えぇっ!!」
「まぁ通りがかりだっつーのは分かってたが、そのまま帰すのも忍びなくてな。送ってったんだが、生憎下のバーさんが居なくってよ。こっちに預けようと思ったんだが、いいか?」
「あぁ……」
そういえば、お登勢は町内会の集まりとかで店を閉めていた気がする。
たまはガソリンの補給、キャサリンは分からないが店に居ないというのならばお遣いにでも行っているのだろう。大体は寄り道して帰りが遅いとお登勢がぼやいていた。
鍵はないのかと聞くと、お登勢がいると思っていたのですっかり忘れていたとのこと。そのまま待っていると、問屋で仕入れた生物が悪くなってしまうため万事屋に連れてきたらしい。
「そうだったんですね」
「ごめんなさい、お登勢さんが戻るまで冷蔵庫お借りします…」
「そこは『お邪魔します』でいいんじゃねえの。なんで遠慮する必要があんだよ」
「あっ、銀さん」
居間から出てきた銀時は、肚を擦りながら口端に米粒を付けていた。
万事屋とは犬猿の仲である副長はぎし、と煙草のフィルターを噛み締め切れ長の目を細める。
「おう、新八ィ。もう炒飯消えたぞ」
「ウソォ!! 僕まだ一口しか食べてないのに!!」
「ふはははは!! この世は弱肉強食アル!! お前の腹に入る飯はもうないネ!!」
「ちょっ、えマジで!? 少しくらいはあるでしょ神楽ちゃん!!」
社長、副長、新顔だけが残された。
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時