はじめてのおつかい ページ12
男に遭遇した日から、『スナックお登勢』での業務は基本的に屋内で済むものを言いつけられた。
あの日、メンテナンスに出されていたたまは事の顛末を知り謝罪したが、あんたが謝ることじゃないとお登勢に諭されて仕事に戻っている。
キャサリンもいつも通りだったが、タマニハ先輩ヲ頼レヨ指導料ハ貰ウガナと言われ、心強い味方ができた。
そんなある日、お登勢に馴染みの問屋に引き取り物があるから行ってきてくれないかと遣いを頼まれた。
ここ最近は厨房の仕事、出ても店先の掃除で終わっていたためにお遣いのような業務は無かったのだ。
ここなんだけどね、と差し出された地図には明確な店の名前、周辺の店の名前や目印が示されていた。この付近は通ったことがあるため、道のりは覚えている。
「大丈夫です。行けます」
「店の名前出しゃ分かるよ。
悪いね、キャサリンもたまも居ないもんで。私はここを離れる訳にはいかないからねぇ」
「すぐに戻ってきますよ」
「じゃ、頼んだよ」
引き取りの控えと地図、財布を懐に入れてスナックを出た。
からりと晴れた、いい青空だ。
「ありがとうございました」
「はァいよ、お登勢さんによろしく」
目的達成は意外と早かった。
目当ての問屋を見つけた記憶は間違っておらず、近隣の店の名前も一致していた。
スナックお登勢の者です、と声をかけると店主はしばし目を見開いて、こりゃべっぴんさんが来たなとからから笑う。
看板を掲げた当初から注文を引き受けているらしく、お登勢とは長い付き合いだという。
お登勢が銀時を連れていたことや、お登勢が実は有名な団子屋の看板娘だったこと、亡くなった旦那やかぶき町四天王の話などを詳しく聞かせてもらった。
お登勢がそんな大物とは知らず、知らぬ間に失礼をしていたのではと青ざめたが、店主はそんなみみっちいことは気にするタマじゃないとはにかんだ。
キャサリンが元泥棒だったことや、たまが看板娘として採用された過程は知らないものの、オヤジが飲むにはいい店だよと絶賛した。
礼を告げて、注文の品を抱えて店を後にする。
袴の裾が破けているのを見て、嘆息した。
駿河から持ってきた、数少ない一張羅なのだ。戻ったらすぐに繕わなければならない。
いや待てよ、糸と針は持ってきていたかと記憶を辿っていると後ろから自分を呼ぶ声がして一旦考えるのをやめた。
振り向くと、万事屋の従業員である青年と、その隣に美人が並んでいた。
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時