三つ巴の悲劇 38 ページ6
「博士、行ってくるわ」
「行ってきます……博士」
車には気をつけるんじゃぞーと、間延びした博士の返事を背に、二人は研究所の門を出た。
凪は道が分からないのか、灰原の後をちょこちょこついてくる。半歩下がった位置に感じる慣れない気配に、口は自然と重くなった。
(せめて吉田さん達に会えれば、少しは彼女も話せるでしょうに……)
舞い降りる重い沈黙に、心中でいつもの三人にすがる灰原。だが突然、後方から呼びかけられ、びくっと肩を震わせた。
「あのっ！」
「っえ!?」
おそるおそる振り返ると、紫の瞳がじっとこちらを見ていて、灰原は何も言えなくなる。しばらくして意を決したように、凪ーークロームは口を開いた。
「あなたのこと、哀って呼んで、いい……？」
真っ赤になって問われた内容に、灰原は呆気にとられた。ぽかんとした相手に、ダメ……？と悲しそうに呟く凪。慌てて、灰原は手を激しく振る。
「いや、全然……いいけど」
「！……ありがとう！」
その花開くような笑顔に、また灰原は肩透かしをくらう。自分だけ身構えてるのが馬鹿みたいだわ、と思いながら、また歩みを進めた。
対してクロームは、後ろを歩くのをやめて、灰原の隣に並ぶ。けれど、灰原は自分から顔を背けたままだ。その曇った表情に、クロームはしょんぼりとうなだれた。
クロームは、本当に”黒崎凪”であった頃、友達がいなかった。
母ですら受け入れてくれない内気さは、他人には近寄りがたいものだったらしく、一日誰とも話さないなんてことはザラにあった。
もちろんクロームは、今回の潜伏が仕事であることを重々承知している。けどそれ以上に、幼い頃できなかったリベンジ、というのも考えていた。
(勅命抜きにして、哀や他の子と仲良くなりたい。今だけでいい……普通の子みたいになりたいの)
決意を胸に、クロームは一人、拳を握る。そして再び、なんとか口を開いた。
「哀は、私のこと……嫌い？」
思いがけなかった問いに、灰原は足を止めた。なんて答えればいい？困惑と焦りが渦を巻く。凪の純粋な瞳を思い出すたびに、答えが遠ざかっていった。
その顔つきに、まずいことを言ったかと黙り込むクローム。互いの空気がより重くなった中、明るい声がそれを引き裂いた。
「あーいーちゃんっ！」
「灰原さんっ！」
「灰原ぁ！」
はっとした哀は声の主に顔を向ける。そこには、いつも通り元気な三人が揃っていた。
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三崎 - こちらの作品も、パスを忘れたのでそのままにするつもりです。今は大変な時期ですが、二次元パワーで現実を乗り切りましょう！ (2020年4月22日 16時) (
レス) id: 070c92fbe6 (このIDを非表示/違反報告)
三崎 - 今は「しま」という名前で、うらみちお兄さんやら携帯獣のクロスオーバーやらpixiv投稿をしています。この三つ巴の悲劇も、もし読んでくださる方がいるなら手直ししてupしたいとも考えています。 (2020年4月22日 16時) (レス) id: 070c92fbe6 (このIDを非表示/違反報告)
三崎 - 現在、サイトの再開に向けて物語を進めたり（進んでない）新しい沼を探したりなどしています。もしこの場所を訪れてくださる方がまたいれば、ぜひご一報ください！ (2020年4月22日 16時) (レス) id: 070c92fbe6 (このIDを非表示/違反報告)
三崎 - どうも、作者です。しばらく夢と創作から身を引いていたのですが、このたび大学進学もきまり、ぼちぼち趣味を再開しています。投稿を終えてからもこんなにたくさんの方々に見ていただけて、うれしい限りです。 (2020年4月22日 16時) (レス) id: 070c92fbe6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！これからも無理せずに頑張ってください！ (2019年9月16日 20時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三崎 | 作成日時：2015年7月2日 12時
