いつのまにか悪女になってた【歌い手】

48話 ページ49

「…どういうこと?」

桃川愛華は黙って、考えて、やっと発言した。

「…なんでもない。」

明らかになんでもなくない。
桃川愛華はうつむいた。

「…私がどうせ悪女だよ」

小さな、誰も聞こえないような声でボソッと、桃川愛華が呟く。
私以外には聞こえてなさそう

「んふふ、いいわ。こんな場所もうあきたし、夏休みあけにはもう転校してるだろうから。あんたの馬鹿な親友もいらないし、返す。」
「っ！お前まだそんな言い方するん！？Aがどんだけ辛かったんかもわからんの！？」
「ごめんけど、わかんないわ。だって私その子じゃないし。その子の気持ちがわかんないのも当たり前じゃない?じゃあ、青春ごっこも楽しんでね」

桃川愛華は変な感じで笑ってそう言った。

「桃川さんがどんたげ辛いことがあったか知らないし、知るつもりもないけど、なんかやりたくてやってるようにどうしても私見えない。転校するんならどっちみち私としてはあなたのこと心底どうでもいい。でもさ、言いたいことはちゃんと言いなよ。受け止めてもらえることもあるんだから。」
「…あんたに言ってほしくない」
「そう。じゃあ、私達は青春ごっこ楽しむから、あなたは退屈な残り時間頑張って」

「…あんたの親友には、もういいって言っとくから。」

桃川愛華は、そう言って教室に戻った。
…これ以上彼女を苦しめるつもりは私にはない。
だって、私もこうやって彼女のあの音声を流すとか、親友奪うとか、彼女以上に最低なことしてるから。
皆だってもうとやかく言うつもり無さそうだし、追いかけたりしない。

「…A！」
「っ親友名前…！」
「本当に傷つけてごめん！謝っても、許してくれないと思う、でも、私はAのこと嫌いって思ったことないし、大好きだから！本当にごめんなさい！」
「…ううん、こっちだってごめん。私も親友名前のこと大好き。だからここまでしてんだし(笑)」

これでやっと、親友名前とのいつも通りの、日常が戻ってくる。
もちろん、これで夏休みも平和に…まってまってまだ昼だ

キーンコーンカーンコーン

「お弁当食べてないしてか確実に遅れたし死ぬ」
「走れお前ら」

やっぱり皆仲良く怒られたわ。
…まぁいっか。
_____

『いつのまにか悪女になってた』 完結

あとがき→←47話

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