第363話🦇ヒトリゴト ページ28
*ミラ side*
……帰ったら、今回の件についてみっちり話し合わんとなぁ。
リシェルの処分、ミランの対応……そして多分、アタシに対しても何かしら小言は言われるやろな。
『次期当主の自覚が足りない』だの何だの……今まで何度も言われてきた言葉を、また生みの親の口から聞かされるのだろう。
そう考えると、ただでさえ重い体がさらに重くなってしまって。
その場から動けなくなったアタシは独り、誰にも聞かせられないような弱音を吐いてしまう。
「帰り、たくない……」
「―――シュピーゲル」
すぐ背後から聞こえてきたその声に、ギクッとして振り向く。
そこには、我らが担任ブルシェンコ先生が立っていて。
「あ……ど、どうしました先生？ もうアタシ、大丈夫ですよ？」
ヤバイ……今の独り言、聞かれてた？
内心焦るアタシをよそに、ブルシェンコ先生はこんなことを告げる。
「……確かに、今のところ何ともないように見えるが…もしかしたら今後、何かしらの変化が起こるかもしれん。そこで……―――経過観察のため、しばらく教師寮で生活することを提案する」
……………へ？
「教師寮…って、先生らが暮らしてるとこですよね……？」
「ああ。教師らにはすでに了承を得ており、理事長から許可も下りた。あとは、お前の意思だけだ」
教師寮に世話になれば、あの面倒な家に帰らずに済む……けど。
「……これ以上、先生らに迷惑はかけられませんよ。それに、帰らんかったら家の奴らがうるさいやろうし……」
「ご実家のほうには、私から話をつけておく。……それに、教師に迷惑をかけるのは生徒の特権だぞ？」
そう言って笑いながら、ブルシェンコ先生はアタシの頭に手を置く。
「前にも言っただろう、シュピーゲル。『お前たちは学生なのだから、ちゃんと教師を頼ることを覚えなさい』」
「ッ……！」
……ホンマ、口うるさくて優しくて…―――最ッ高の先生やなぁ……！
「じゃあ……しばらくの間、お世話になりますね」
先生はきっと……アタシが帰りたくないってこと、わかってたんやろな。
経過観察、なんてそれっぽい口実まで作って……でも、ありがとうございます。
やっぱりアタシ……アナタが担任で、ホントに良かったですよ。
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作者名：空文 晴霧 | 作成日時：2022年9月11日 21時
