残された香り ページ30
次の日、テヒョンと一緒に病室に行くとジョングクの姿は消えていた。
慌ててナムジュン先生の元へ行くと、今日朝一で別の病院に移ったことを伝えられた。
日本に、ジョングクが持つような記憶障害に詳しい先生がいるらしく、前々からその先生に診てもらうようユンギさんから話はしていたようで。
だけど、ジョングクはずっと断り続けていたらしい。
TH「あいつ…、
なんで何も言わないんだよ…」
声を震わせるテヒョンの隣で、私は自分でも驚くほどに冷静で。
それはきっと、どこかでこうなることを予想していたからだと思う。
ずっと、いつかジョングクが私達から離れていってしまうような気がしていた。
ああ、だけど。
いよいよもう、彼に会いに行くこともできなくなったのだと思うと、やっぱり悲しくて。
瞬きをした拍子に、
耐えていた涙が一粒だけ、頰を伝う。
それから。
ふと思い出して、私が彼に渡した花束を探したけれど、病室のどこを探してもそれは見つからなかった。
___
_____
___数ヶ月後
『あー、もうユンギさん!それ違います!』
YG「?」
『大丈夫です、私がやりますから!』
YG「わりぃ。」
『レジ、お願い出来ますか?』
花束を結ぶリボンをぐしゃぐしゃに巻きつけるユンギさんから取り上げて、レジの方へと押しやる。
「Aちゃん?
お花取りに来たわよー。」
『キムさん!
今行きます!!!』
作業台の上に置かれた花束を手に取り、小走りで表へと向かう。
『こちら、ご確認ください。』
「あら、素敵!孫もきっと喜ぶわ。」
『良かったです!』
季節はいつのまにか春を迎え、卒業式の時期のせいか、花屋はいつもよりも慌ただしい。
「あのイケメンの店員さん、まだ帰ってこないのね?」
『…はい。』
「寂しいわね。2人すごくいい雰囲気だったから。」
…ジョングクが日本へ発ってから、約半年が過ぎた。
私は前に彼に言った通り、
今日もここで、ジョングクの帰りを待っている。
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kairu(プロフ) - こんなに心を揺さぶられる作品は初めてで本当に読み終わった事が悲しいやら、嬉しいやらです。本当にひとつの素晴らしい映画を見終わった様な気持ちです。ジミンペンなんですけど、グクペンになりそうです。まだ涙が止まらないです。素晴らしい作品ありがとうございます (2021年4月27日 19時) (レス) id: df72f9e897 (このIDを非表示/違反報告)
リユン - すごい感動しました!読んでいくうちに自然に涙が溢れてきて、読んでよかった!!という気持ちになりました、! (2021年2月14日 23時) (レス) id: 00bef8cb3c (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - そんな…泣かさないでぇ。涙枯れる (2020年11月28日 14時) (レス) id: e9d90d82df (このIDを非表示/違反報告)
kurikurina(プロフ) - すごい感動しました!!私が好きな小説と似ている設定だったので余計にグッとくるものがあって…最高でした!! (2020年9月27日 1時) (レス) id: 5527e740c4 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - オトさん» わぁあ!それは嬉しすぎるご連絡です。すごく嬉しい・・・ありがとうございます!!(o^∀^o)どちらも思い出深い作品なので、そのように言っていただきとても嬉しいです。ありごとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2020年9月1日 23時) (レス) id: b1cdd73458 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミロ | 作成日時:2019年9月29日 23時