雨とサイレン ページ40
『テヒョン君、まだ濡れてるよ!』
TH「俺よりAが先でしょ?」
ふにゃっと笑顔を作るテヒョン君の黒い髪はまだ濡れていて、毛先から雫が落ちてベンチに座る彼のズボンを濡らす。
『私はもういいです!貸して!』
TH「あー。」
彼の手からタオルを奪い取り、その濡れた頭を強引に拭く。
TH「俺はいいのにー。」
『良くないです!』
それでも気持ちよさそうに目を閉じて鼻歌なんか歌うテヒョン君にちょっと笑ってしまう。
『風邪引いちゃいますね。』
TH「ねー。」
『!わあ!ちょっと人に見られます!』
TH「見るがいい!」
後ろから抱きしめられて抵抗すると頭に顎を乗せられて上からぐりぐりされる。
『…痛い。』
TH「ねぇ。」
『はい?』
TH「ここから僕のおうちがとても近いんですが。」『一人暮らしのですね?』
TH「ええ、ええ。雨宿りがてらいかがですか?」
『下心の方は?』
TH「無いとは言いませぬ。」
嘘はつけなーい!とぎゅって腕に力をこめるテヒョン君。可愛いなぁと思う。
テヒョン君なら大丈夫かな。
そう思って振り返ると、私を見つめていたテヒョン君とばちっと目が合って…
声が、出なくなる。
『っ、や、』
TH「っ」
『あ…、
っ、テヒョン君ちがうの…』
TH「ううん、俺がごめん。」
なんで私、避けてしまったんだろう。
あと少しで触れるはずだった唇。
気がついたら顔を逸らしてしまっていた。
『…テヒョン君、おうち行ってもいい?』
TH「え…?
…A。
無理しなくていいんだよ。」
『無理してないよ!』
TH「ううん。
今日は、帰ろう?ね?」
『帰らない!』
TH「…A?」
心配そうな顔で、自分にすがりつく私を見るテヒョン君。
息が、苦しい。
遠くで救急車の音が聞こえる。
雨の音、
サイレンの音_
怖い…。
『嫌いにならないで…っ』
TH「どうしたの、A、」
もう、誰もいないの。
ホソク君にはソナさんがいて。
オッパはどこかに行っちゃった。
テヒョン君までいなくなったら、私はどうしたらいいの…?
『やだよ…』
TH「A?
大丈夫だから…、ねぇ、」
『ホソク君…っ』
ああ、そうだ。
あの日。
藤棚の下で泣く私を抱き上げてくれたのは…
ホソク君だった。
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ミロ(プロフ) - みみ仔さん» コメントありがとうございます(^ ^)結構最後まで引っ張ってしまったのですが、結局のところ主人公はホソクさんが大好きだったので、他の2人にはすごく申し訳ないながらも、私もこのオチで満足してます笑なのでそう言ってもらえて嬉しかったです(*^▽^*) (2020年4月3日 0時) (レス) id: 5d7ae6ba18 (このIDを非表示/違反報告)
みみ仔 - ホソクさんメインのお話少なくて、またこのような感動的なお話が読めて私は幸せです。また、最後のホソクさんに告白をする場面、テヒョンやグクには申し訳ないですがホソクさんで良かったなと思いました。最後の場面がどうなるか予測不可能でした。(笑) (2020年3月22日 4時) (レス) id: abbe16bc2b (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - さきさん» さき様 ありがとうございます(;_;)今回かなりジョングクが切なくて…。私も書きながら辛かったのですが、共感してくださって嬉しかったです(*^^*)みんなを幸せに出来ないのが辛いところですね。またジョングクも幸せにしてあげたいと思います!!(*^_^*) (2020年3月15日 22時) (レス) id: 5d7ae6ba18 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 今回のお話はすごく切なかったです。ミロさんの作品全て素敵で切ない作品と多いのですが今回は特にジョングクの複雑な兄弟愛とテヒョンの優しさが余計に切なくなりました…。すごく感動して毎話泣くくらいの勢いで号泣しました。素敵な作品をありがとうございました!! (2020年3月12日 2時) (レス) id: 71073e79d4 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - よしほさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます(*^^*)読んでくださる方がキューってなるといいなと思って書いたので、ガッツポーズしちゃいました(*^^*)他のも読んでくださるのですか?とても嬉しいです!是非仲良くしてください!(*^_^*) (2020年3月10日 22時) (レス) id: 5d7ae6ba18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミロ | 作成日時:2020年2月12日 22時