今更だけどチート ページ15
焦りを悟らせず、軽やかな、その場に似合わない声。
決して大きくはないが、そこによく響いた声。
心地良い低さのそれは、ポロもサリバンもよく知る、あの声に他ならないーー
「…………で、デルキラさま、」
誰が見てもわかる、明らかな隙。
モネが見逃すはずは、無かった。
絶対に、アトリを逃してはならない。
宝を狙う敵には、凄惨たる、“教育”を！！！！！！
「ハッ！」
小さな掛け声と共に、踏み切った床にヒビを入れながら、ふわりと飛び上がる。
この間、モネが
耳を押さえるために、落としてしまった棍を拾う時間は、無い。
ならば、己の肉体で。
アトリだけをしっかりと見据え、大きく、しかしコンパクトに体をひねる。
さあ、授業を始めようじゃない！！！！
ドガァンッッッッッッッッ！！！！！！！！！！！
その右足の先を、アトリの肩にめり込ませ、見事な飛び蹴りを喰らわせた。
「「「ッッ！！！！」」」
たった一蹴り。されど一蹴り。
先程のシーダと、ほぼ同じことをしたにも関わらず、衝撃波に思わず目を瞑るくらい、まさに、破壊そのものを表すような蹴り。
シーダがいかにマジョリティに過ぎないか、入間たち生徒は、この衝撃波に愕然とした。
流石のポロも、この勢いばっかりは、抱えたままではいられず、モネが狙ったアトリのみが、的確に、吹っ飛ばされた。
壁を突き破り、校舎の外の木に、ギリギリひっかかったらしい。
足で骨を砕いた感触はあったため、今は激痛で、捕まえても抵抗はできないはず。
素早く着地し、アトリを確保すべく、踏み切ったモネ。
が、それは叶わなかった。
ギィィィィィィィィンッッ！！！！！！！
「がッッ…………！！！！！！！！」
耳を切り刻むこの音には、敵わない。
流石のモネも、今度こそ、床に膝をついてしまう。
「アンタなんかに、あの方を汚されるわけにはいかないのよ」
射抜く瞳に、モネは多少怯むも、あの頃の拷 問を思い出しながら、必死に睨み返していた。
「…………２度目はないわよ」
飽きたか。
それだけ呟き、アトリを回収したあと、ポロは上に飛んでいってしまった。
後を追えるのは、サリバンしかいない。
「…………事情は分かりませんが。それを、こちらに渡していただけませんか？」
ーーポロくん
ピッ……
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作者名：Sela | 作成日時：2023年3月26日 23時
