9話 ページ10
「聞こえなかったの?私の分作れって言ってんの」
「なんで…ですか」
「今日フルで働いてたから疲れたし、それに別にラテアート上手くなろうと思ってここに入ってきたわけじゃないし。私オスマンと一緒に長くいたいからここにいるだけで、ラテアートとかだるいんだよね」
「…え?」
「面倒だから、私が作ったように見せかけてよ」
白金さんが何を言っているのかが分からなかった。
「それは…出来ません」
「…は?なんでよ、簡単でしょ?いつもAさんが作ってるのより少し下手にやっとけばいいのよ?」
「無理…です」
その時、先日の更衣室のような形相をした白金さんが私のワイシャツの襟元をガッと掴んだ。
「……いいからやれよ」
ゾクッと背筋が凍る感覚。白金さんの冷たい瞳が私に突き刺さる。
でも…負ける訳にはいかない。
「ラテアートに手を抜くなんて…私にはできません…」
「…は?」
「私は、本気でラテアートを上手くなりたいんです!そんな手を抜くような人のために、作る筋合いはありません!!」
「…ざけんなっ…!」
襟元を掴んでいた白金さんの右手だけ離れ、その右手は大きく後ろへ引いた。
このままだと平手打ちされる…!
危険を感じ、私はぎゅっと目を瞑った。
「はい、ストップ」
「…きゃっ!」
その声を聞き、私はゆっくり目を開けると大きく後ろに引かれた手を片手で止めていた彼の姿があった。
「白金さん、君さ」
「オスマンくん…これは…これは違うの…!」
「何が違うの?」
「こいつが…私を侮辱して…っ…」
「まぁ聞いても無駄か。俺会話聞いてたし。それに店長からさ、君の勤務態度について今さっき話があったんだよね。俺がいない時の勤務態度、めちゃくちゃ悪いんだって?」
「えっ…そんな…こと…!」
「あるだろう、白金」
低いバリトンボイスがキッチンに響く。その声の方向に向いていると、休憩室へ続くドアに寄りかかっている店長がいた。
「フロアからさ、キッチンの様子見えるんだよ。キッチンからもフロアが見えてるんだ、分かるだろ?それでキッチンでのお前の態度に不信感を抱いた客が、クレームしてきたんだ何人も。そして今こうやって大事な従業員を傷つけようとしている。やる気がないならもう来ないでくれ」
「…そ、そんな…ごめんなさ……」
白金さんの右腕はスルリと彼の手から抜け、その場で足から崩れ落ちた。
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ゆゆもち - マンちゃん大好きなのでめちゃめちゃ助かります…!!爽やかマンちゃんもかっこいい!! (2021年11月28日 14時) (レス) @page13 id: c0c49f03e7 (このIDを非表示/違反報告)
白楼恋 - ・・・まんちゃん・・・尊い!!・・・やばい・・文才が溢れ出てる・・・・なんかもう白金さん止めた時のマンちゃんイケメン・・・これはハンカチが自分の血で染まりますわ (2020年4月3日 11時) (レス) id: fc9ad241ba (このIDを非表示/違反報告)
美蘭(プロフ) - こゆきさん» ほっこりとしていつつもしっかりしている先輩像が合うんじゃないかなと思って書かせていただきましたが、楽しんでもらえて光栄です( *˙-˙* )こちらこそ読んでいただきありがとうございます! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 9739ce79c0 (このIDを非表示/違反報告)
美蘭(プロフ) - いちごスムージーさん» おおおおありがとうございます!あまり見ないですよね、mnちゃんのキャラ掴むのも結構大変でしたが見ていただけてとても嬉しいです!まだ書いていないメンバーも書いていくのでぜひ見ていただけると嬉しいです! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 9739ce79c0 (このIDを非表示/違反報告)
美蘭(プロフ) - みかげさん» このシリーズは、全話読み切りなので完結した時点で公開するようにしてます!まだ書いていないメンバーはいるので、次のお話も近日に公開致します! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 9739ce79c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美蘭 | 作成日時:2020年3月28日 17時