10話 ページ11
それから白金さんはその場で解雇となり、家へ帰らされていた。
私も何が起こっていたのか整理がついておらず、休憩室でボーッとしていた。
「Aさん」
そんな上の空状態の私を戻してくれたのは、既に私服に着替えていた彼の声だった。
「あ、オスマンさん…すみません色々と大事にしてしまって」
「ううん、大丈夫。怪我はなかった?」
「はい、大丈夫です」
「良かった。あのさ、良かったらフロアでエスプレッソ飲まない?俺が作るから」
「へ…いいんですか?」
「うん、疲れたでしょ。少しゆっくりしようよ」
「分かりました…着替えてからフロアに行きますね」
「りょうかい」
私は更衣室で私服に着替え、そのままフロアへと向かった。
既に彼の荷物が置かれていた、向かい合ったテーブルに座った。
少し待っていると彼がやってきた。
「お待たせ」
彼が持ってきたのはコーヒーカップの下に受け皿。ここまでは普通なのだが、更には、カップの上にも受け皿が覆いかぶさっている。しかし、その中でもエスプレッソの深い香りは空間を包んでいる。
「これは…?」
「ふふっ、そうだなぁ〜…
俺からの気持ち、かな?」
「オスマンさんからの気持ち…?」
「開けてみて」
私はコーヒーカップを覆っている受け皿を外した。
そこには見慣れたエスプレッソの一面に描かれた、
────── 大きなハート。
私はコーヒーカップを手に取り、マジマジとそれを見た。
「…えっ…?」
「…あれ、伝わらなかったかな?」
はは、と苦笑いする彼。
「ううん、やっぱりこういうのは口で言わないとダメ…だね。
上手く言えないかもしれないけど、
俺は…
ラテアートの練習を頑張る君が好き。
何があっても自分の意志を貫く、強い君が好き。
どんな時でも謙虚な心を持ってる君が好き。
Aさんのことが好きなんだ。
俺の気持ち、受け取って欲しい」
「オスマン…さん…」
真っ直ぐ向けられる彼の深緑の瞳。
私はその瞳に見守られながら、カップの縁に口を付け、そのまま傾ける。
エスプレッソの苦味と、ミルクの甘さが口の中で交わり、満たされていった。
そしてゆっくりたコーヒーカップを置き、彼の方を向く。
「…受け取りました。
私も…
私もオスマンさんのことが好きです」
テーブルに置かれたハートのラテアート。
───────それは互いに微笑み合う私たちを、繋いでくれたのだった。
277人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆゆもち - マンちゃん大好きなのでめちゃめちゃ助かります…!!爽やかマンちゃんもかっこいい!! (2021年11月28日 14時) (レス) @page13 id: c0c49f03e7 (このIDを非表示/違反報告)
白楼恋 - ・・・まんちゃん・・・尊い!!・・・やばい・・文才が溢れ出てる・・・・なんかもう白金さん止めた時のマンちゃんイケメン・・・これはハンカチが自分の血で染まりますわ (2020年4月3日 11時) (レス) id: fc9ad241ba (このIDを非表示/違反報告)
美蘭(プロフ) - こゆきさん» ほっこりとしていつつもしっかりしている先輩像が合うんじゃないかなと思って書かせていただきましたが、楽しんでもらえて光栄です( *˙-˙* )こちらこそ読んでいただきありがとうございます! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 9739ce79c0 (このIDを非表示/違反報告)
美蘭(プロフ) - いちごスムージーさん» おおおおありがとうございます!あまり見ないですよね、mnちゃんのキャラ掴むのも結構大変でしたが見ていただけてとても嬉しいです!まだ書いていないメンバーも書いていくのでぜひ見ていただけると嬉しいです! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 9739ce79c0 (このIDを非表示/違反報告)
美蘭(プロフ) - みかげさん» このシリーズは、全話読み切りなので完結した時点で公開するようにしてます!まだ書いていないメンバーはいるので、次のお話も近日に公開致します! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 9739ce79c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美蘭 | 作成日時:2020年3月28日 17時