-八頁目- 君の思う侍 ページ8
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────おでこが冷たい。
肌に感じる冷たい感触に少年は目を覚ました。
勝負は…!と慌てた様子で飛び起きるが、徐々に頭が覚醒していきあの白髪に負けたのだと思い出す。
手元に、額に当たっていたであろう手拭いがはらり、と落ちた。
「 おや、目覚めましたか。───まったく、寺子屋に道場破りだなんて聞いたことありませんよ。ケガがこれくらいで済んでよかった 」
優しい声音で声を掛けたのは吉田松陽だった。少年は怪我の手当てをされていた。
「 ……………俺より弱い奴と試合うのが飽きただけだ。本当はアンタかあの女とやりたかった。まさか、あんな奴に…… 」
「 君は十分強いですよ。あの銀時とあれだけやり合ったのですから 」
「 でも負けた 」
「 ええ。だからもっと強くなる。恥じることはありません。あの子はちょっと特殊ですから。君が戦いたいと言った女の子も。彼は生き残るために……彼女は大切な家族を護るために……強くならざるを得なかった子です 」
朝のような柔らかい日差しではなく、昼くらいの少し強めの日差しが今、この場にいる
ある者は刀を持って外側の廊下に立っていて、
ある者は心配そうに銀髪の少年の隣にいて、
ある者は塾の外から友の様子を見ていた。
「 君も道に迷ってここに辿り着いたのでしょう。私もそうです 未だに迷っている。それでいい…悩んで迷って君は、君の思う侍になればいい 」
なんだかその言葉がストン、と落ちてきた。
少年は手拭いを手に持ち立ち上がり、「 世話になった。これは洗って返す 」と二言残して裏口から出ていった。
「 ……私の、手拭い… 」
❁❁❁
翌日。またAは掃除をしていた。松下村塾は小さな塾かもしれないけど、子供のAにとっては広かった。
同じ教室で一緒に勉強している女の子は沢山いるのだが、自ら距離を置きがちなため掃除を手伝ってもらおうと思っても断られるのが目に見えて分かる。
変な所で人見知りが出てしまう自分に嫌気がさして諦めたかのようにため息をついた時、ジャリ、と音が聞こえた。
小さい音でもすぐ気づける。一人の時は特に。
でも音の正体を見たAは動揺した。
「 え、あ……昨日の 」
「 ……これ 」
「 え? 」
「 この手拭い、お前のだって聞いた 」
「 確かに私の…ですけど… あの、お節介なのは分かってるのですが、また道場破りですか?その怪我で? 」
「 …… 」
少年は何も言わず、Aを通り過ぎて行った。
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運動系引きこもり(プロフ) - 琥珀@中也が尊いさん» 琥珀@中也が尊いさんコメントありがとうございます!分かりました、検討してみます! (2021年2月28日 12時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀@中也が尊い(プロフ) - 表紙がすごい銀魂感。作者様が書かれたのですか?あの、作者様が書かれたのであればもし宜しければ文字がないバージョンを上げて頂きたいです。すっご表紙好きです (2021年2月28日 1時) (レス) id: bc2916a5a7 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - きみをさん» きみをさんコメントありがとうございます。あぁぁあ、ありがとうございます……ッ!更新頑張りますので是非とも本編の方も読んでいってください……!! (2021年1月31日 13時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
きみを - はぁぁぁ好きすぎる、、更新楽しみに待ってます! (2021年1月30日 23時) (レス) id: 2684e373b7 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - リアさん» リアさんコメントありがとうございます……!一気読みしてくださって嬉しい限りです^^本編もどうぞ読んでください!映画は私も泣きました……。これからも応援よろしくお願いします (2021年1月26日 0時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:運動系引きこもり | 作成日時:2020年2月9日 17時