-十五頁目- 縛り付ける蔦 ページ15
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「 はぁ、はぁ、 」
「 ぜぇ、ぜぇ、 」
両者から荒い息の音が広がる。銀時ばかりが攻めて、Aばかりが守っている。昨日もそれで引き分けになってしまった事を思い出す。
俯き、攻めてこなくなった銀時をAは凝視した。なにかをたくらんでいるのか、と。
ザ…、と足を少しずらすと、それと同時に銀時が顔を上げた。
「 お前から来いよ 」
「 っえ 」
「 なんで攻めてこねーんだよ。未だに根暗の人だってもっと攻めてくるぞ 」
「 根暗と戦ったことあるん? 」
「 ──いいから来いよ 」
Aは黙る。目線を地面に落とし全ての人類に謝るかのように眉も下げ、誰にも気づかれないように奥歯を噛み締めた。
吹っ切れたと思ってた。父親に決闘を申し込んで、炎の中で戦って、燃え盛る家を後にして崩れていく様を背景に吉田松陽について行って。
それで、吹っ切れたと思ってたんだ。
でも、まだAの身体に蔦の様なものが絡みつき縛っている。動けない、動かさないように。
その蔦を辿ればきっと、“お父様”がいる。“弟”がいる。“道場の子達”がいる。
震える口で、舌でそっと押し出すように言葉を繋いだ。
「 だ、だって……怪我、させたら…。それに、私は体力あるしわざわざ攻撃せんくても相手が疲れて、試合も終わるかと思て… 」
「 A 」
「 ? 」
「 いや「?」じゃねーだろ。お前怪我させてるだろ何回も 」
「 え 誰に? 」
「 俺に 」
「 …………………………………………あっ 」
「 あっ じゃねーよ!無自覚だったの??ねぇ。何回鼻血出たと思ってんだ! 」
これはギャグとかではなく、ガチでハッとしたのである。(それもそれでどうなんだ)
もしかしたら今まで“普通”の、松下村塾に通う生徒達を見て感覚が前みたいに戻ってしまっていたのかもしれない。
怪我をさせてはいけない、またそういう風に思ってしまっていた。
「 ( そっか……なら大丈夫やん ) 」
目の前にいるのは銀時だ。
昨日みたいにまた温かい気持ちになった。でもどこか昨日とは違う温かさ。言うならば甘酸っぱかった。
「 ( 今回の事はウチの勝手な思い込み、みたいになっとるけど……銀ちゃんにはいつも助けられとるなぁ… ) 」
本人はどう思ってるんだろう。どっちにしろ、銀時はAの欲しい言葉をくれた。助けてくれた。
たまにムカつく事があるけど銀ちゃん達と一緒にいられるのはすごく楽しい。
「 ( あぁ…やっぱりウチ、銀ちゃんの事、だぁい好きや ) 」
その後は全力で試合してAが勝った。
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運動系引きこもり(プロフ) - 琥珀@中也が尊いさん» 琥珀@中也が尊いさんコメントありがとうございます!分かりました、検討してみます! (2021年2月28日 12時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀@中也が尊い(プロフ) - 表紙がすごい銀魂感。作者様が書かれたのですか?あの、作者様が書かれたのであればもし宜しければ文字がないバージョンを上げて頂きたいです。すっご表紙好きです (2021年2月28日 1時) (レス) id: bc2916a5a7 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - きみをさん» きみをさんコメントありがとうございます。あぁぁあ、ありがとうございます……ッ!更新頑張りますので是非とも本編の方も読んでいってください……!! (2021年1月31日 13時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
きみを - はぁぁぁ好きすぎる、、更新楽しみに待ってます! (2021年1月30日 23時) (レス) id: 2684e373b7 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - リアさん» リアさんコメントありがとうございます……!一気読みしてくださって嬉しい限りです^^本編もどうぞ読んでください!映画は私も泣きました……。これからも応援よろしくお願いします (2021年1月26日 0時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:運動系引きこもり | 作成日時:2020年2月9日 17時