-三三頁目- 決行の時間 ページ33
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この街は田舎だ。灯りも少ないので月が輝いて見える。星々が点々と、夜空に張り付いている。
すっかり暗くなってしまって、よく見ないと転んでしまいそうだった。
家の門の前で身を潜めて弟を待っていると、小さな声で私を呼ぶ声が聞こえた。
「 お姉ちゃん、お姉ちゃん 」
「 お、来たか 」
えへへ、と屈強のない笑顔。
それが眩しすぎるからこんな暗い道でも大丈夫かもしれない。(おい)
この子は優しいから私の言うことを聞いてくれる…、つまりは騙しやすい。
言葉を発する度に胸がズキズキ痛む。優しさを利用するなんて愚の骨頂。
それでもこの子が、この子が───
「 ──なら、先に行っててくれるかな 」
「 え?どうして? 」
「 私、早く来すぎて持ち物確認していなかったの。だから忘れ物しちゃって……。取りに行かないといけないから、さ。道はわかるでしょう? 」
「 う、うん…分かるけど… 」
門から出た私達は屋台がある道に向き、私は弟のまだ小さい肩に両手を置いた。弟に近づけば消毒の臭いが鼻に届く。
───お前には、戦いも何も関係ない場所で…
「 真っ直ぐ行けば着くから。────……振り返っちゃダメだよ 」
「 う、うん 」
そう言って弟はぎこちなくとも歩き出した。
そう、そのまま歩き続けて。私から、この家から離れて…。
「 ( ごめん、ごめんね。こんなやり方しか出来なくて……。ごめん、ほんとうに…) 」
弟は次第に暗闇に消えていって姿は見えなくなった。私は家を睨んだ。
家政婦さん達は帰った。この家には私と──
「 ( お父様だけ… ) 」
茂みに隠した灯油を家の前にぶっかける。
あぁ、思い出すな。前にも家を燃やそうとして、そこで吉田松陽と出会ったんだっけ。
あの時、私何考えてたんだろう。
気づいたら蝋燭を持ってたし。
「 ( 灯油、かけ終わった…。よし、やってやる…!! ) 」
明かり代わりに使っていた蝋燭の炎を
どんどん燃え広がっていく。草木が燃え、家まで燃え始めた。
火の粉が頬を掠ったが、気にしない。
私は真っ直ぐ燃えていく家に向かって歩いた。
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-三四頁目- 待ち構える大きな背中→←-三二頁目- 燃やします
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**雪音**@テスト嫌だ(。´Д⊂) - わ、そうですよね、不躾な質問をしてしまい申し訳ありませんでした…!!勿論です!これからも応援させていただきます! (2021年1月2日 14時) (レス) id: d23b4dd949 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - **雪音**@テスト嫌だ(。´Д⊂)さん» 初めまして!ありがとうございます。質問の件なのですがそれを言ってしまうとネタバレになってしまうので控えさせていただきます……(><)お答えできず申し訳ないです。それでもまだこの作品を読んでいただけるのなら幸いです (2021年1月2日 11時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
**雪音**@テスト嫌だ(。´Д⊂) - 初めましてコメント失礼します!質問なんですが、弟くんはどうなるのですか? (2021年1月2日 3時) (レス) id: d23b4dd949 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - ポンポネッラさん» コメントありがとうございます!!そうですよね、神ですよ。あの3人組は!いつか高杉さんとヤクルコの話書きたいです← (2019年11月25日 15時) (レス) id: 711990e728 (このIDを非表示/違反報告)
ポンポネッラ(プロフ) - あら!東雲さんと愉快な仲間たちの過去が覗けるなんて.......尊い(ぐへ) 個人的にショタ塾組は神だと思ってます。はい。 (2019年11月25日 4時) (レス) id: 96af192ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:運動系引きこもり | 作成日時:2019年11月4日 17時