-十五頁目- シロツメクサのかんむり ページ15
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白髪の男の子の呆然した。ただの野花に対して随分と目を輝かせた反応だったからだ。
彼は手に持った草餅を一口で食べきる。糖分が体に入ってきて思わず高揚した。そしてAに問いかけた。
「 おい、なんでそんなに、 」
「 だって!シロツメクサってかんむりをつくれるんですよね!? 」
「 はぁ? 」
「 一回作ってみたかったんです! 」
Aはそういうが、シロツメクサは五本しかない。もっと違う所に行けばたくさん咲いているかもしれないが、ここはただの河原だ。花もない、ただただ真っ青な芝と太陽に反射してキラキラしてる川がある、ただの河原。
確か松陽が言ってた気がする。女はなんだって花が好きなんだと。綺麗なものが好きなんだと。
百合の花、薔薇、鈴蘭。花の名前を挙げてみれば綺麗な花なんていっぱいある。白髪の男の子はこれくらいしか知らないが、いっぱいあると思ってる。
だけどなんでこの女はシロツメクサに目を奪われてるのか分からなかった。
「 つ、作れますかね!? 」
「 少なすぎだろ 」
「 や…やっぱり… 」
Aは憧れていた。昔母が読んでくれた絵本に出てた可愛らしい女の子。チューリップ畑じゃなくてただの野原で、白くて小さい野花が咲き狂い、女の子はにこにこ笑っていた。
そこで出会った男の子に白い花を摘んで作ったかんむり。女の子はもちろん喜んでいた。
家族から愛され、優しい友人に恵まれ、かんむりを作ってくれた男の子に恋する。
なんて夢物語なのだろう。なんて出来すぎた話なのだろう。出来ることなら彼女になりたかった。そうしたら毎日が幸せなのだろう。
皮肉じみた事しか思えない。家族からは愛されてるのだろうか、私は。友人もいない、恵まれてないのだろうか、私は。こんなので、誰かを好きになることなんてできるのだろうか。
せめて形だけでも欲しかった。
彼女がただの野花に目を輝かせているのは彼女自身が心の底から湧きあげてきた羨望感。
「 あ、そういえば名前は教えてくれないのですか? 」
「 だから話を突然飛躍させんなよ。…あー 」
白髪の男の子は悩んだ。もう別にどーでも良くなっていた。なんで昨日意地張って教えなかったのか不思議なくらい。
恐らく、何度も何度もみた彼女の笑顔に自然と警戒心が緩和されていったのだろう。白髪の男の子はそれに気づいてないが。
それでも最後の警戒心が残っていたのか、開きかけた口を閉ざす。ふと彼は川に目をやる。何かを思いついたのか、ニヤリと笑い、
「 なら、あれで勝負だ 」
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**雪音**@テスト嫌だ(。´Д⊂) - わ、そうですよね、不躾な質問をしてしまい申し訳ありませんでした…!!勿論です!これからも応援させていただきます! (2021年1月2日 14時) (レス) id: d23b4dd949 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - **雪音**@テスト嫌だ(。´Д⊂)さん» 初めまして!ありがとうございます。質問の件なのですがそれを言ってしまうとネタバレになってしまうので控えさせていただきます……(><)お答えできず申し訳ないです。それでもまだこの作品を読んでいただけるのなら幸いです (2021年1月2日 11時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
**雪音**@テスト嫌だ(。´Д⊂) - 初めましてコメント失礼します!質問なんですが、弟くんはどうなるのですか? (2021年1月2日 3時) (レス) id: d23b4dd949 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - ポンポネッラさん» コメントありがとうございます!!そうですよね、神ですよ。あの3人組は!いつか高杉さんとヤクルコの話書きたいです← (2019年11月25日 15時) (レス) id: 711990e728 (このIDを非表示/違反報告)
ポンポネッラ(プロフ) - あら!東雲さんと愉快な仲間たちの過去が覗けるなんて.......尊い(ぐへ) 個人的にショタ塾組は神だと思ってます。はい。 (2019年11月25日 4時) (レス) id: 96af192ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:運動系引きこもり | 作成日時:2019年11月4日 17時