幕府のボディーガードさん4【銀魂】

第165訓-■■■篇-十五 今度こそ、 ページ15

【Noside】




「────おい。」




薄暗い所だ。湿ったくて、出来れば長居したくない所。

くせっ毛の赤髪と首元にある数珠を揺らしながら百鬼凛太郎は筒状の水槽を眺めていた男に話しかけた。

男はゆっくり振り返ると作り物のような瞳を凛太郎に向ける。





「……上手くいったか？」


「ああ 勿論。【第一段階】は成功。このまま混乱させて、エラー(・・・)を発生させ続ければ……」


「記憶の一部が戻り、俺(・)があの女を殺せるんやな。」


「うん。好きな殺し方をすればいいよ。それでお前の気が晴れるならな。だけど一回きりだ。それ以上は許さねェ。」


「わーっとるわ。シスコンも大概にしやがれ。
……つかこんな簡単にかかるなんざホンマにあの女強うなっとるんか？」


「あの香りにはウイルスが含まれてるから。一族限定の、ね。それを嗅いだらもう……抗えない。」


「こっっっっわ。普通そこまでするか？サイコパスかよ。あ、サイコキラーか。」


「お前も似たようなもんだろうが。だいたいお前が言ってきたんだろ。ここまでするのにどれだけ時間がかかったと思ってる。」


「罪のなすりつけ、信頼落とし……色々やったもんやのぉ。」


「……………………成りすましは楽しかった。」

「いい加減にしやがれ。小声でも聞こえてんだよ。」



「でも、最終的には僕の為にもお前の為にもなる。」


「………………。」






「ふ、ふふふふ…… 嗚呼、もうすぐだ。ずっと……ずっとこの時を待ってた。」






小さなモニターに映る自身の姉(・・・・)を見て、先程の無表情とはかけ離れた、うっとりしたような表情を浮かべる。




男───名を【東雲しずき】。



何を隠そう東雲Aの──────“弟”。





しずきは紺色に光る父の形見を耳につける。唯一片耳だけが残っていたものだった。


これはあの日を忘れないため。

模造刀を胸に突き刺し、焼かれた状態で見つかった父の姿を見たあの日。

暗闇なはずなのに映えるように見えた銀髪と黒髪を見た炎のあの日。



“忘れるはず”の記憶が、鮮明に残っている。









「ねぇ、姉さん。今度こそ……一緒にいようね。」









もう、僕を置いてったりしないで。



僕の幸せは姉さんの隣にいることだから。



そのためにはまず姉さんには…………









「死 ん で も ら わ な き ゃ 。」









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