第136訓-ミツバ篇-六 結局は素の自分でいられる関係であることが一番だ ページ36
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騒ぎを一区切りするようにスー…と襖の開く音がした。そこには両手の指先を綺麗に揃えて頭を下げている男の人がいた。
────名を、蔵場当馬。
Aは静かに息を飲む。彼は貿易商を営んでおり、極めつけは『転海屋』と名乗った。この人が今回追っている人物だったのだ。
「(この人が……沖田さんのお姉さんの……。)」
「おや?もしかして貴方は東雲Aさんですか?」
「え?えぇ…。そうですが、なぜ名ま」
Aが言いかけた後、後ろからまた声が聞こえた。
「土方さんじゃありやせんか。こんな所でお会いするたァ、奇遇だなァ。
────どのツラ下げて姉上に会いに来れたんでィ。」
いつも通りの声音のはずなのにどこか冷たさを感じた。まるで怒っているかのような。
すると、Aと沖田は目が合った。またそらされるかな、と思ったら沖田は口を開いた。
「……姐さんも土方さんに付き合ってんですかィ?」
「あ、あぁ… 仕事やしな。」
「そうですか。」
「(え それだけ?)」
会話がいきなり終了すると、山崎が沖田に向かって弁解を始めた。すると土方が山崎を蹴る。鼻柱が赤くなった山崎の首根っこを掴み、土方はそそくさと退散していってしまった。
土方はAも来るように命令形で指示した。
「(……私、土方さんより立場高いんやけどな。)」
ま、今更か。と自己解決し、蔵場と沖田にお辞儀し、銀時に手を振って土方の後を着いていった。
「土方さん 待ってください。」
「遅ェわ。」
わがままかい。
「あ!俺車取りに先行ってますんでお二人はゆっくり来てください!」
山崎が土方の拘束から逃れ、逃げるように走っていった。男女二人が残された。
「………土方さん。」
「俺は仕事に私情は挟まねェ。」
Aが何を言おうとしたか分かっているかのように土方は言葉を重ねた。後ろを歩いているAには土方の背中が自分より小さく見えた。
「───そうか。土方さんがそう決めたんなら、私は変えようがないな。」
「ハッ 分かってやがんのか。」
「ま、弱音も聞いたってもええけどなァ。なんなら胸だって貸したるわ。」
「いらねーよバカ。」
「バカって言う方がバァーカ。」
Aが口元を緩ませると、土方も片方の口角を上げた。なんだかんだ、素でいられたのであった。
それを後ろで、見ている者がいた。
「(───……気に食わねェ。)」
第137訓-ミツバ篇-七 誰もが皆、持っている夢を叶えたがるものだ→←第135訓-ミツバ篇-五 心配のしすぎは相手を信用していないことと同じである
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運動系引きこもり(プロフ) - 無影灯さん» はじめまして!コメントありがとうございます!面白いと言うコメントを頂くとやっぱり嬉しいものです…。はいっこれからも頑張りますね!! (2020年3月12日 17時) (レス) id: 711990e728 (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - はじめまして、お疲れ様です!見やすくて、とても面白いです!これからも応援してます! (2020年3月12日 15時) (レス) id: 7a1223e495 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - 糸針シナさん» シナさんいつもありがとうございます引き継ぎが出来ました。ほんと、お礼したいですいつか。評価の方はこちらで頑張ってみます!ありがとうございました…!!シナさんも更新頑張ってください応援してます…! (2019年11月30日 16時) (レス) id: 711990e728 (このIDを非表示/違反報告)
糸針シナ(プロフ) - 評価ボタン押せるには押せますが見えませんね…、引き継ぎですが、こちらでできますよ〜!→ https://uranai.nosv.org/favcnt.php (2019年11月30日 16時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:運動系引きこもり | 作成日時:2019年11月30日 15時