壊れてしまう貴方へ【まふまふ】

十六日目 ページ18

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ベンチの上で思いきり伸びをし、深呼吸。

公園の桜並木にセミの鳴く声が響いた。


……夏って風情があって好きなんだけど、セミがなぁ……。


でもセミって、寿命は一週間くらいなんだっけ？


……可哀想に。



隣に立て掛けておいたギターを手に取って、軽く弾いてみる。


うんうん、いい音だ。


ぴたりと、鳴らすのを止める。


思い出したのはあの女の子のことだった。

あの子は……一ノ瀬さんは、普通の女の子っていう感じがしなかったなぁ。


親近感を覚えるのはどうしてだろう。


僕の演奏を好きと言ってくれたから？

彼方さんと同じ苗字だから？

それとも

作詞ができるから……？




見た感じは整った容姿で、それによく似合う白いワンピース。どこかの令嬢だったりするのかな？
あっ、でもそしたら僕不審者扱いされないかな？大丈夫なのか？

でも


あんなに凄い才能があるんだから、生かせばいいのに。



ウンウン考えていたその時だった。


「あの……こんにちは。」

「うぇあ！？……あっ、あぁ！あの、その、こんにちは！……えっと……。」

「あぁぁ……すみませんすみません……！」


情けない。情けないぞ、真冬。

びっくりしてまともな返事もできない挙げ句、一ノ瀬さんに謝らせるなんて……！



「ほんとすみません……僕、普段あまり人と接してなくて….。」


急いで立ち上がり僕が必死で頭を下げると、一ノ瀬さんはきょとんとした後、くすっと笑った。


「いえ、謝らなくて結構ですよ。あの……来て良かったんですよね？」


遠慮がちに言う彼女に、僕は慌てて隣を空けた。

「ごめんね、座って！僕からその……誘ったくせして。」


ほんとだよ。勢いとはいえ、あれは誘ったことになるよなぁ。


一ノ瀬さんはまたもや遠慮がちに辺りを見回すと、おもむろに隣へ腰かけた。


「……失礼しますね。」

「あっいや、昨日みたいに地べただと服とか汚れるかなって……！遠慮しなくていいからね、うん！」


コミュ障スキル発動すんなおい。


不審者だ。確実に不審者だ。



そもそも、隣に幼女(年齢は知らないけど)を座らせるとか初なんだけど。
女の子とまともに話したのも初かも。
恋とかしたことないよ。


「えっとね、わざわざ呼んだのにはちょっと訳があって。」


こんな僕でも、一ノ瀬さんは真剣に話を聞いてくれる。


「曲をね……聴いて欲しいんだ。」

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