【A3!】だらりと垂れた、充電コード (ページ32)

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32ボルトページ32

遠く聞こえる祭囃子。

並ぶ提灯と屋台。

ここはどこ？

目をこすると、そこは神社だった。

ここはお祭りの時に紬さんと来た神社…

ふと目線を前に向けると、ベンチに誰かが座っていた。

あれは、小学生の頃の私…

近づくと、泣いているのか鼻をすする音が聞こえた。

あぁ思い出した。

施設の子とお祭りに来た時、偶然クラスのヤツと会って罵倒されたんだ。

1人で逃げちゃって、それでここに…

？「どうしたの？」

突然話しかけられ、私は振り返った。

？「迷子になった？」

私「…？」

？「泣かないで。
大丈夫だよ」

彼は泣く私の隣に座り、涙を拭ってくれた。

これは、私の過去の幻覚？

そして彼は誰？

？「お母さんとお父さんは？」

私「いない…
生まれた時からいない…」

？「そっか…
じゃあお友達とかは？」

私「…どこに行ったかわからない」

？「じゃあお兄さんとここで待ってようか。
俺も迷子なんだ」

数歩後ろで、見守る私。

紬さんと祭りでここに来た時、デジャヴ感を感じた。

忘れてたけど、これだったのか。

さっきまで泣いていた私は、彼と話してるうちに笑顔が戻ってきた。

「Aちゃーん！」

私「あ、ゆんちゃん！」

？「お友達？」

私「うん！お兄さん、ありがとう！」

？「どういたしまして。
もう迷子にならないようにね」

私「うん！
あっ！お兄さん待って！」

？「何？」

階段を降りる足を止め、振り返ってくれた。

私「お兄さん、お名前なんてゆーの？」

彼は優しく微笑み、

紬「紬だよ、月岡紬」

と言った。

貴「月岡…紬…」

私「紬お兄ちゃん！
また会おうね！」

紬「うん、また会おうね」

ほろりほろりと目から涙が流れた。

あの時私を救ってくれたのは、紬さんだった。

貴「紬さん…！！」

どうして私は忘れていたんだろう。

どうしてあの時、思い出せなかったんだろう。

私は顔を両手で覆った。