第53話 ページ22
遂に始まってしまった。
ダンスタイムが。
フロ「大丈夫だって。
俺の言う通りに足動かしてね」
貴「わ、分かりました」
フロイド先輩は私の前に手を差し出し、体制を低くさせた。
フロ「お手をどーぞ、小エビちゃん」
その姿に少しだけドキッとしつつ、手を握った。
中央まで共に歩き、先輩の手が腰に添えられる。
フロ「右を前、左を揃えて次後ろ、右揃えて、それ繰り返すんだよ」
貴「こうですか?」
フロ「うん、上手だね」
先輩の上手いアシストで不恰好にならずに踊れた。
楽しい…
こんなの初めてだ。
貴「先輩、すっごく楽しいです」
フロ「俺も」
まるでお姫様にでもなったかのような気分だ。
心が浮いているよう。
曲が終わり、軽く頭を下げて中央から捌けた。
フロ「小エビちゃん、このまま抜け出そっか」
貴「え?」
フロイド先輩は手を引き、そのままどこかに連れて行かれた。
着いたのはVIPルーム前の水槽通路だった。
フロ「どうだった?パーティは」
貴「こんなの初めてなので新鮮でした。
ドレスコードとかダンスとか、ほんとに初めてだらけで楽しかったです」
フロ「それは良かった」
小エビちゃん、と呼ばれ顔を上げた。
彼は覚悟を決めたような顔をし、私の頬に手を添えた。
フロ「今日の小エビちゃん、すげー綺麗」
貴「え、へ、」
やばい。
今から何されるかわかる。
体が…
貴「まって、先輩まって」
フロ「何で?」
頭の中に流れる、前世の記憶。
貴「ごめんなさい、私まだ…怖い…」
先輩の手が頬から離れ、私の手をそっと握った。
フロ「そっか、ごめんね」
貴「…いえ」
フロ「俺の気持ちだけ言っていい?」
貴「うん」
フロ「好きだよ、小エビちゃん」
36人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:華ヶ崎レオ | 作成日時:2023年5月17日 20時