第30話 ページ30
本丸に戻り、縁側に降ろしてもらった。
豊「待ってろ、すぐ包帯と消毒液貰ってくっから」
私は行こうとする豊前くんの手首を掴んだ。
貴「豊前くんは先に手入れ部屋に行って。
これくらいなんともないから」
豊前くんは私の手を優しく解き、怪我をした方の手を持ち上げた。
自分の血で真っ赤になった私の手のひらは誰が見ても痛々しい。
豊「俺らは手入れすりゃすぐに治る。
でも主はそうもいかねぇだろ」
貴「でも、大丈夫だよ!」
豊「主が良くても俺が良くねぇんだ」
眉間に皺を寄せ、私の手を包み込んだ。
豊「頬の傷だって跡になったらどーすんだよ。
まだこれから嫁に行くかもしんねーのに」
貴「そんな大袈裟な!
お嫁なんて予定すらないのに」
けど、そういう豊前くんは辛そうな顔をしていた。
豊「ごめんな…
守ってやれなくて」
なぜか私の目から涙が溢れてこぼれ落ちた。
貴「助けてくれたのに、謝らないで」
豊前くんは私の頭を撫で、「すぐ戻っからな」と中に入っていった。
豊前くんの顔が頭から離れなくて、心をギュッと握りつぶす。
彼の辛そうな顔は見たくない。
胸が苦しい。
心臓が熱い。
雲「主!」
雨「頭、ご無事で」
駆けつけてきた2人は泣きじゃくる私を見て驚きあたふたしていた。
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作者名:華ヶ崎レオ | 作成日時:2023年12月8日 5時