検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:4,797 hit

第3章-2 ページ24

笑っていいのかちょっと戸惑っていると、ビーさんは目を泳がせて「あっち」と顎で指す。

「楽しそうに走り回ってる青のツナギが兄貴。名前は一回聞いたんだけど、覚えられなくてさ。『なんて名前かもう一回教えてもらえる?』って聞いたら、『この世界じゃもう生まれ持った名前なんか飾りやろ。特に苗字はな』だって」
「…………」
「でも、何らかの名前は必要だよ。覚えときな、助けを呼ぶときのために」
「はい……じゃなくて、わかった」

 頷く私と史恵菜。それぞれ名前を名乗ると、史恵菜は恐る恐るビーさんを見上げた。

「BPAさん?獣道さん?……のこと、ビーさんって呼んでもいいの?」
「いいよ。何でもいいけどね。ビーって呼ぶのは兄貴だけで、アンドゥトロワは『けもさん』って呼ぶし」
「じゃあ私もけもさんって呼ぶ」

 柔らかく笑う史恵菜に、ビーさんも「OK」と笑う。
 私はどうしよう。
 けもさんって呼んでみたいけど距離が近すぎるような感じがして、気が引けてしまう。
 それにビーさんは瞳の色も青っぽくて、日本の人じゃないみたいだから、そのままの方が良いのかな……。
 なんて考えている間にどんどん話題は移る。史恵菜はすっかりビーさんと打ち解けたようで、更に隣には『白髪だけどアン』と紹介されたスーツの人も立っていた。

「何であなたたちそんなに強いの?奴らをバンバン殺せてるし――」
「俺らはあいつらを殺さない」

 アンさんが史恵菜の言葉を遮って、苛立ったように言った。

「あ……すぐ復活するって聞いた」

 私はウリさんの言葉を思い出す。だけどビーさんは頭を振った。

「違う、そうじゃない。殺す気満々で殺せてない人たちと一緒にしないで」
「ご、ごめんなさい」
「ビー」

 ビーさんをアンさんが手で制して、私に向き直った。

「発症者を治す方法があるんだ。俺らはそれをやってるだけ」
「治す!?治るものなの?でもどうやって……」

 それがあれば、もし施設の妹たちが感染していたとしても治せる。ウリさんの仲間にもし感染した人がいれば治せるし……ううん、それだけじゃない。文字通り世界が救われる。

「あんた、何しにここに来たの?どこから逃げてきたの?」

 途端に饒舌になった私を見て、ビーさんが眉をひそめた。

「もしかして、誰か感染した?」
「あっ。感染じゃないけど、救急隊員さんに母を診てもらいたくて。……会えてないけど。電話番号は分かる」
「……かけてみな」

第3章-3→←第3章-1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:天王() , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。