第3章-2 ページ24
笑っていいのかちょっと戸惑っていると、ビーさんは目を泳がせて「あっち」と顎で指す。
「楽しそうに走り回ってる青のツナギが兄貴。名前は一回聞いたんだけど、覚えられなくてさ。『なんて名前かもう一回教えてもらえる?』って聞いたら、『この世界じゃもう生まれ持った名前なんか飾りやろ。特に苗字はな』だって」
「…………」
「でも、何らかの名前は必要だよ。覚えときな、助けを呼ぶときのために」
「はい……じゃなくて、わかった」
頷く私と史恵菜。それぞれ名前を名乗ると、史恵菜は恐る恐るビーさんを見上げた。
「BPAさん?獣道さん?……のこと、ビーさんって呼んでもいいの?」
「いいよ。何でもいいけどね。ビーって呼ぶのは兄貴だけで、アンドゥトロワは『けもさん』って呼ぶし」
「じゃあ私もけもさんって呼ぶ」
柔らかく笑う史恵菜に、ビーさんも「OK」と笑う。
私はどうしよう。
けもさんって呼んでみたいけど距離が近すぎるような感じがして、気が引けてしまう。
それにビーさんは瞳の色も青っぽくて、日本の人じゃないみたいだから、そのままの方が良いのかな……。
なんて考えている間にどんどん話題は移る。史恵菜はすっかりビーさんと打ち解けたようで、更に隣には『白髪だけどアン』と紹介されたスーツの人も立っていた。
「何であなたたちそんなに強いの?奴らをバンバン殺せてるし――」
「俺らはあいつらを殺さない」
アンさんが史恵菜の言葉を遮って、苛立ったように言った。
「あ……すぐ復活するって聞いた」
私はウリさんの言葉を思い出す。だけどビーさんは頭を振った。
「違う、そうじゃない。殺す気満々で殺せてない人たちと一緒にしないで」
「ご、ごめんなさい」
「ビー」
ビーさんをアンさんが手で制して、私に向き直った。
「発症者を治す方法があるんだ。俺らはそれをやってるだけ」
「治す!?治るものなの?でもどうやって……」
それがあれば、もし施設の妹たちが感染していたとしても治せる。ウリさんの仲間にもし感染した人がいれば治せるし……ううん、それだけじゃない。文字通り世界が救われる。
「あんた、何しにここに来たの?どこから逃げてきたの?」
途端に饒舌になった私を見て、ビーさんが眉をひそめた。
「もしかして、誰か感染した?」
「あっ。感染じゃないけど、救急隊員さんに母を診てもらいたくて。……会えてないけど。電話番号は分かる」
「……かけてみな」
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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時