【天王()】表裏一体な毎日【短編集】

レイブンクロー ページ29

「そのまま喧嘩してご覧。一番減点されるのは誰かな。私達の証言と貴方たちの証言、周りがどっちを信じるか…くらいは分かるよね」

　ゾッとするほど冷たい声の少女はツリ目を少年たちに向ける。机を囲んでいた少年たちは何も言わず、そろそろと後ろに下がっていく。そして少女が「けもさん」と囲まれていた側の少年に声をかけると同時に、踵を返して一目散に教室を出ていった。

「あ、逃げた」
「ええやん、何する気やったん」
「懲らしめないと同じことを続けるよ？」
「まあなぁ……。うーん、けどなぁつかさん」
「？」

　白い髪を耳の下でくるんとまとめ、赤いリボンで結んでいる少女――つか。見た目は入学当時から男子に相当な人気があった。…がしかし、周りを寄せ付けない声色とオーラ、核心を突く鋭い発言で今ではもう告白を受けるどころか声をかけられることもない。
　つかはキョトンとした顔で可愛らしく首を傾げる。兄貴はため息をついたあと、「ま、もう俺らが友達やし。一緒におるし、大丈夫か」と呟き、グラデーションの髪色の少年――けもさん、と呼ばれた少年に笑いかけた。

「ともだ…え？」
「友達やで」
「そ、そんな。…馬鹿にされるよ。半マグルとつるんでるって」
「そんな時代はもう終わったの」

　カツカツと靴を鳴らし、少年の隣に座るつか。

「かの英雄ハリー・ポッターが闇の魔法使いたちを壊滅させたから。そんなことを言う輩は時代遅れと罵って良いのよ。レイブンクローは、持てる知を良い方向に使う魔法使いにならないと。貴方はマグルを差別するの？」
「そんなことしない」
「それなら、どんな寮生よりも模範的な生徒だわ。それこそ兄貴や私なんかより」

　にこり、と微笑むつかに頬を赤らめる少年。

「そ、そんなことは」
「けもさん」

　少年の後ろの席に腰を下ろし、兄貴はわしゃわしゃと髪を撫で回す。

「わぷ」
「ぜーんぜん、なんも気にする必要ないで」
「けもさん…いえ、正しい名前を教えてもらえる？私たちを、貴方の友達にさせて欲しいの」
「ぼ、僕は。…獣道、です」
「あー、やからけもさん、なんか。わいはスガ。兄貴って呼ばれとるけど、どっちでもええで」
「獣道さん、けもさん。今日から友達ね。嬉しいわ。私はつか」

　よろしく、と微笑むつかに、少年――獣道はしかし笑い返さない。「どうして」と消え入りそうな声で言った。

「なんや？」

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