【天王()】表裏一体な毎日【短編集】

【軍曹・兄貴】モノクロ�� ページ18

爆音と共に真っ白い扉が飛び散っていく。
　その向こう、これまた真っ白な机に向かう真っ白な白衣を着た女は、RPGを手に廊下に佇むその人を見て、特に驚きもせずに笑顔で首を傾げた。

「ばれたか」

　白衣の下に着ているにわとりパーカーのフードが揺れる。

「ばれたか、じゃねえわ。ここを見つけたのは偶然やけど」

　とその人はRPGを床に投げ捨て、今度は背負っていた弓矢を構えた。どんな表情をしているのかは、にこりと笑う雑面に阻まれて読めない。
　机の向こう側で笑顔を絶やさない大人と、武器を手に佇む表情の読めない子供。
　異様な光景だった。

「うーん。それにしてもあと数日は隠れていられるかなって思ってたんだけどな」

　白衣の女は飄々と流しながら、しかし両手は休めずに薬品を調合し続ける。

「自覚があるってことはれっきとした裏切り…やんな？めいろさん。説明してもらえる？」

「殺意が高いなぁ軍曹。弓矢なんて構えられちゃ、怖くて喋れないよ」

　声から苛立ちを隠さない雑面ーー軍曹。天王()きっての特攻隊長、第一天王()軍曹その人である。
　『めいろ』と呼ばれた白衣の女はフラスコ越しに軍曹を見つめた。

「ここを見つけるなんて、私は君の嗅覚を疑うよ。人間じゃないね。あ、人間じゃないのか」

「まあ…ね。多少は、ね」

　弓を構えたまま小さく肩をすくめ、早く言えと急かす軍曹。
　この研究施設の存在は、場所を天王()の誰にも打ち明けていないはずだった。
　そもそも第三裏天王()が所有する研究施設は世界中に100をも超える。そのうちのたった一つに、隠れた次の日に辿り着くなんて、誰が考えるだろう。

「裏切るとか裏切らないとか、そんな次元の話じゃない」

　めいろは嘲笑うように言った。
「そもそも、裏切るってどんなこと？」と、目を細める。
　軍曹は苛立ったように弓を引く右手をより後ろに下げた。

「…仲間なのに、敵を情報を売ったりとか」

「うんうん。他には？」

「その薬を敵対組織に提供したり、とか」

　ひゅん、と素早い音。
　次の瞬間、机の上のフラスコが砕け散った。めいろは両手で顔を隠し、飛んでくる硝子の破片と液体から身を守る。
　腕の陰からちらりと顔を覗かせれば、フラスコがあったと思しき場所には一本の矢と、重力に従って滴り落ちる液体。めいろは悲しそうに「私の新商品が！」と叫び、棚から再びフラスコを取り出した。

「めいろさん、今ワシらが戦ってる組織に薬を提供したやろ」

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