竜頭抗争―45日目 ページ32
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“織田作之助と云う構成員についてどう思った?”
首領からのその質問に暫し黙り込む。
織田作之助と出会ったのは竜頭抗争が始まって暫くした頃。
殲滅対象の組織が根城にしていた場所が織田作之助の巡回経路にあったため、地理に詳しい人物と云う事で招集したのが切掛けだ。
それ以来、何かと頼ることが多くなったのだが・・・。
「変わり者、ですね」
「どう変わっているんだい?」
その言葉に何処か楽し気に聞き返す首領に淡々と返す。
「不殺ずのマフィア、彼の異名です。その名の通り同行させた現場で人を殺めている処は見ていませんね」
「どんな危険な場所でも?」
「はい。試しにある外部組織の殲滅作戦に参加させた際、前線に立たせてみましたが殺すどころか生かして昏倒させていました」
「樋口君に任せている案件はどれも簡単なものではないはずなんだけど」
「ええ、実力は本物かと。お陰で捕縛した組員から聞きだした情報で芋ずる式に釣れた協力組織の殲滅ができ、私としても有り難い収穫となりました」
「成程。変わっているが優秀な人物だと云う事は分かったよ」
「ええ。構成員の多くは彼に対して善い感情は持っていないようですが、彼自身が組織を裏切ることはないと思いますよ」
私のその言葉に豆鉄砲を喰らったような表情をした首領に「あれ?その心配をしてるんじゃないのか?」と思わず首を傾げる。
「・・・如何してそう思ったんだい?」
「いえ、私はてっきり不安要素のある下級構成員の様子を探って来いという御命令なのかと」
この抗争が始まってから組織を裏切ろうとするものが増えた。
その一環で幹部派閥にも入らず、マフィアとして異色の異名を持った織田作之助が目を着けられたのかとばかり思っていたのだが。
「ああ、確かにその心配もあったんだけど、本当の所はあの太宰君と仲良くしている人物が如何いう人間なのか知りたくてね」
その言葉に思わず、良くない友達とつるんでいるかもしれない息子を心配する親と云う構図が頭に浮かび、頭の中から振り払う。
そんな可愛らしい理由からではない事だけは理解できるからだ。
「君がそう判断したのなら間違いないんだろう」
首領の何処かご機嫌な様子に、目を着けられた織田を哀れに思った。
(首領。太宰には今回の件、云わない方がいいですよ)
(そうだよね。絶対冷たい目で見られる)
(先程のお言葉、第三者が聞けば過保護な親の発言そのものでしたからね)
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汐里(プロフ) - Re-VI@TANさん» コメントありがとうございます!すいません、完全にミスですね。恥ずかしい。後程修正致します!作品を気に入って頂けて光栄です!一度陥ると中々抜け出せないのが難儀ですよね…応援有難う御座います!頑張ります! (2018年4月8日 9時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
Re-VI@TAN(プロフ) - ブランクではなくスランプ、では?私もよくスランプに陥りますねwでもそれは真剣に考えて作ってるからそこだと思います!先日この作品を見つけ、とても面白くて1日の半分ほどかけて読み続けてました。これからも頑張ってください!長々と失礼しましたorz (2018年4月8日 1時) (レス) id: 1436669b3d (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - 八重桜 蜂さん» 八重桜様、コメントありがとうございます!そう言って頂けて凄く嬉しいです!またぼちぼち更新していくので、楽しんで頂ければと思います。それでは失礼いたします! (2018年2月27日 23時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
八重桜 蜂(プロフ) - 続編とても楽しみにしてましたー!!1のときからずっと見てて、素晴らしい作品だと感心してました()応援してます!!! (2018年2月27日 23時) (レス) id: de911b9147 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汐里 | 作成日時:2018年2月27日 22時