区切り ページ28
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先日の一件で犠牲となった仲間の墓に花を手向ける。
一つ一つ手を合わせ、気がつけば随分な時間が経っていたらしい。
遠くで教会の鐘が鳴っているのが聞こえ、もうこんな時間かと見上げた空は赤かった。
「よっこいしょっ」と立ち上がり背筋を伸ばす。
パキパキと音が鳴る背骨に、根を詰め過ぎたかとほんの少しの反省と、真新しい花束が添えられた墓一つ一つを見やり、その光景に満足する。
しかしまだ終わりではない。
最後に行くべき場所がある。
もう何年も足を運んでいなかった場所だ。
「久しぶり。お父さん、お母さん」
想像していたよりもずっと綺麗な状態を保っていた両親の墓。
墓には真新しい花束が添えられていた。
きっとこの花は邦子が持ってきたものだろう。
私の花もその横に添え、手を合わせる。
「私は元気にやっているよ。組織も以前よりずっと良くなったし大きくなった。けど、やっぱり敵は多いよ」
近状の報告と、妹の事。
新しい家族の事。
死者にこの言葉が届くわけがない。
普段の私なら絶対にしないだろう。
けど、珍しく話したい気分になった。
冷たい潮風が髪を撫でる。
墓の裏手は海だったことを思い出し、足を向ける。
今頃、首領と中原、紅葉姐さんは本部で祝杯を挙げている頃だろう。
部下たちにも今日くらいは羽目を外させるべきだろうと、打ち上げの許可を出したのも記憶に新しい。
勿論直談判しにきたのは梶井率いる開発班の面々だ。
彼らは今回の計画を成功させるうえで、大いに貢献してくれた功労者だ。
無化に扱う事なんてできないしね。
探偵社でも同じだろう。
邦子から探偵社においでよー的な内容の連絡が来たけど丁寧にお断りした。
手を組んだとはいえ、敵対関係である探偵社に単身で乗り込む度胸は無い。
階段に腰掛け、のんびりした時を過ごす。
・・・アニメの中だとエンディングが流れているくらいの時間だな此れ。
「ああ、これから如何しよう」
今までとは違い、私はこの先の物語を把握していない。
今ある情報の中で何かが起こる事は分かっていても、何が起こるのかまでは分からない。
想像の範疇から出ないのだ。
それが不安で堪らない。
幼少の頃に戻った気分だよ。
ああ、そうか。
彼らと同じ土俵に立ったと云うだけなのか。
ピロンっという着信音が聞こえ携帯端末を立ち上げる。
「うわぁ、最悪だ」
届いたメッセージを見て、私は頭を抱えた。
“死の家の鼠が頭目。行動を開始した模様。皆様方、警戒されたし”
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汐里(プロフ) - Re-VI@TANさん» コメントありがとうございます!すいません、完全にミスですね。恥ずかしい。後程修正致します!作品を気に入って頂けて光栄です!一度陥ると中々抜け出せないのが難儀ですよね…応援有難う御座います!頑張ります! (2018年4月8日 9時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
Re-VI@TAN(プロフ) - ブランクではなくスランプ、では?私もよくスランプに陥りますねwでもそれは真剣に考えて作ってるからそこだと思います!先日この作品を見つけ、とても面白くて1日の半分ほどかけて読み続けてました。これからも頑張ってください!長々と失礼しましたorz (2018年4月8日 1時) (レス) id: 1436669b3d (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - 八重桜 蜂さん» 八重桜様、コメントありがとうございます!そう言って頂けて凄く嬉しいです!またぼちぼち更新していくので、楽しんで頂ければと思います。それでは失礼いたします! (2018年2月27日 23時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
八重桜 蜂(プロフ) - 続編とても楽しみにしてましたー!!1のときからずっと見てて、素晴らしい作品だと感心してました()応援してます!!! (2018年2月27日 23時) (レス) id: de911b9147 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汐里 | 作成日時:2018年2月27日 22時